TRPG風の異世界で作ったキャラに転生? モブキャラプレイヤーの冒険記

月見ひろっさん

第1話 キャラクターメイキング


 「ふう~~、今日もしんどかった~。」


 俺はただの冴えないおっさん、吉田よしだ 太郎たろうと言う。独身。


 自分の部屋に帰宅して、荷物を置いて部屋着に着替えたら、早速作業開始だ。


 「やっぱ、ストレス解消にはこれだよな。」


 夕飯の惣菜パンを食べながら、いそいそと用紙にシャープペンで書き込む。


 「名前は何にしようかな~?」


 うきうきしながら考えを巡らせ、顔はにやけているだろう。


 「あ~楽しいなぁ~、自分の分身を作るのは。」


 そう、俺は今、TRPGのキャラクターメイキングをしているのだ。


 「よし! 名前はジョーにしよう。分かりやすくて覚えやすい。」


 子供の頃だったか、一度だけ「なんちゃってTRPG」に誘われた事があった。


 「イメージは………そうだな、昔のRPGの取説に描かれていた主人公キャラをコピーして貼り付けしよう。カッコいいじゃんね、このキャラ。」


 ちなみに俺はTRPGは今でも未経験だ、クラスメイトがやっているのを横で見ていただけ。


 「能力値はサイコロの出目で勝負だな、さて、戦士寄りかな? それとも魔術師寄りかな?」


 だが、その時の事はよく覚えている。異なる世界で活躍する自分のキャラクターを自らの手で生み出し、そのキャラになりきって遊ぶのは衝撃的だった。


 「おっ! 良い目が出たぞ! STRは高めか、平均的な戦士タイプになりそうだ。」


 以来俺はTRPGの世界にドはまりし、お小遣いを貯めてルールブックを買った。


 「能力値はこんなもんか、次はジョブを決めるぞ。メインはどうしようかな。」


 ルールブックを読み耽り、カバー裏のキャラクターシートをコンビニのコピー機で拡大コピーし、10枚程コピーした。


 「うーむ、ここはやはり王道に戦士系でいくか! ファイターで決定っと。」


 学校帰りに、仕事帰りに、自分の分身であるキャラクターを作るのは楽しかった。


 「メインジョブはファイターとして、サブはやっぱスカウトは必要だな。」


 こうして俺は、キャラクターメイキングを子供の頃からの趣味となっていった。


 「よし! ファイターLV3、スカウトLV1、レンジャーLV1、こんなもんか。」


 おっさんになった今でも、こうしてキャラメイクして楽しむ。


 ………それだけ。それだけである。友達は居ない、知り合いも。


 「このキャラだったら俺はどんな冒険を繰り広げようかな?」


 なので、TRPGは未プレイである。キャラクターメイキングをして楽しむだけ。


 「良いのだ! 人に笑われようが、俺はこれが好きなのだ! キャラメイクが!」


 だって、ワクワクしてくるのだ。どんな冒険をしようか考えながらキャラを作るのが。


 「リプレイ本は読んだ事あるけど、人と話すのは苦手だ。だから多人数セッションとか無理。」


 口下手なので友達もいないし、子供の頃に一度だけTRPGに誘わても、ろくに上手く出来なかった。


 「だけど俺ははまってしまった、TRPGのキャラメイクに。」


 人に誇れる趣味ではないけど、俺はこれが好きなのだ。楽しいのだ。


 「後は初期アイテムの道具を揃えるだけか、冒険者セットはマストとして、ファイターだから鉄の剣だけでも買っておくか、まぁこんなもんだろう。」


 あ、スキルを忘れていた。取り敢えず剣術だけでもセットしておくか。


 時計を見ると、夜中の12時を既にまわっていた。


 「もうこんな時間か、風呂入って寝るか。」


 キャラメイクを一旦止め、俺は風呂に入り就寝に就く。


 「明日も朝が早い、早めに寝るか。」


 部屋の灯りを消し、布団を被り、目を閉じて呼吸を落ち着かせる。


 「それにしてもさっき作ったキャラ、ファイターの「ジョー」は中々の出来だったな。俺のお気に入りキャラの一人にしよう。」


 そんな事を思いながら、俺は深い、とても深い眠りに落ちていったのだった。


 



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2024年11月25日 12:00
2024年11月29日 12:00

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