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「お父さん。お母さん。少しお話があるの」

 その日の夜の森家の夕食のあとの時間に、キッチンにある(コーヒーカップが三つ置いてある)テーブルのところで、三久は自分の両親に向かってそう言った。

 三久はすごく真面目な表情をしていた。

 三久のお父さんとお母さんは三久の真剣な雰囲気を察して、夕食の後片付けが終わったあとの(三久も手伝った)キッチンのテーブルのところに座って、「なんだい?」と言ってから、三久の次の言葉を待った。

「進路の話なんだけど……、実は相談があるの」

 と、(どきどきしながら)三久は言った。

 それから三久は、自分の今の正直な気持ちを両親に伝えた。

 三久は、やっぱり東京にある音楽の勉強ができる古い伝統のある高等学校に進学することにした。それは少し前から、音楽部の顧問である並木先生に進められていた学校であり、進路だった。

 その古い伝統のある高校は、並木先生の古巣で、並木先生が高校生時代に、音楽を勉強した学校でもあるらしい、とても由緒ある名門の女学校だった。(音楽家もたくさん生まれている実績のある高校でもあった)

 それから三久は、鞠に『やっぱり、私は並木先生に進められていた東京の音楽の勉強ができる高校に、進学しようと思います』と連絡をした。

 三久がゆっくりと温かいお風呂に浸かって、それから部屋に戻ってくると、鞠から、返事が返ってきていた。

 そこには『おめでとうございます。先輩』と一言だけ、文字があった。

 三久は鞠に『……ありがとう』と返事を返した。(そのあとで、三久はベットの上で、一人で泣きはじめた)

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