奇食ハンター『アリス』〜禁忌の食材を求めて
さやまる
序章
プロローグ 奇食
奇食――それは奇妙で常識外れな食材。食す者に超常の恩恵、あるいは災いをもたらし、その存在自体が“禁忌”とされていた……。
ここに美食で溢れた国がある。その初代皇帝は美食だけでは飽き足らず、奇食を大変好んだことで知られている。
彼は数多の奇食伝説を残した。
闇の果実
月が見えない夜にのみ咲くという禁断の植物。口にした瞬間、舌先に染み渡る冷たい苦味が永遠の夜を連想させ、肉体は闇と同化し意味を失う。食した者は因果律を捻じ曲げ、己が望みを叶える力を得るが、同時に深い狂気に囚われ、決して戻ることはない。
悪魔の吐息
一度、悪魔の吐息を感じれば、比類なき快楽が全身を駆け巡り、魂にまで深く刻まれる。しかしその瞬間から、永遠に吐息の虜となり、生涯を悦楽に溺れることとなる。
天使の唄声
天使たちが響かせる甘美な音色は、聴く者に神の祝福を受けるが如き、神秘の幸運をもたらす。しかし、その唄声は静かに心を侵蝕し、やがては運命すらも狂わせる。
吸血鬼の女王の生き血
幾千万の人の血を吸血したが故、糧にした命の分だけ生命力を秘めている。食す者に女神の如き美貌をもたらすが、満たされることのない血への渇きが芽生え、永遠に死ぬことはできない。
これらは、その奇食伝説のほんの一部である。
そして、現在。初代皇帝没後、およそ千年が経過した中で、貴族、富豪、時の権力者達もまた、美食だけではその欲望は満たされなかった。彼らは禁忌と知りながらも、密かに……だが狂おしいほどに奇食を求めていた。
その声の高まりに応えるようにして、依頼を受け奇食を入手するハンターの出現は必然であった。
奇食の入手には、死に直結する危険が伴い、卓越した技術と力が必要とされる。
だからこそ、彼等は禁忌を犯す者として忌み嫌われながらも、あらゆるハンターの中で全頂点に君臨し、桁違いの報酬を得ることができた。
人は彼等をこう呼ぶ――
『奇食ハンター』
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