第三話 向日葵の初めて

プロローグ


 初めて四足歩行から二足歩行になったのは、太陽の方が早かったらしい。



 あたしが立てるようになったのは、その一週間後くらいだったらしい。



 初めて言葉を喋ったのも、太陽の方が早かったらしい。



 あたしが喋れるようになったのは、その三日後だったらしい。



 初めてオムツが取れたのは、あたしの方が早かったらしい。



 太陽のオムツが取れたのは、半月後だったらしい。



 小さい頃からお隣さんの太陽とは何をするにも大体同時期だったらしく、“初めて”を経験するのは常に太陽と一緒。



 初めての友達。


 初めてのお泊り会。


 初めての公園。


 初めての幼稚園。


 初めてのお遊戯会。


 初めての――…



 何を経験するにもいつもそこには太陽がいて、多少の日時に差はあっても、殆ど一緒に初めてを経験してた。



 だけどある時を境に別々に……っていうよりは、置いてけぼりを食らうようになった。



 あれは太陽のトラウマの元凶。



 女の子にキスをされた太陽。



 太陽はファーストキスを経験したのに、あたしはまだない。



 あれくらいから何となく差が出てきて、今じゃ太陽はあるのにあたしにはない経験が結構ある。



 何となくそれがに落ちない。



 ライバル視って訳じゃないけど、太陽が経験した事はあたしだってしておきたい。



 ……って言ってもファーストキスに関しては、そこまで割り切れはしないけど。

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