向日葵と太陽

ユウ

向日葵と太陽

第一話 向日葵と太陽

プロローグ


“可愛い子ね”



 小さい頃からその言葉は、あたしじゃなく太陽に向けられた。



 白い肌に大きな目。



 赤みがかった唇に、ニッコリ笑うと出来る笑窪《えくぼ》。



“元気な子ね”



 小さい頃からその言葉は、太陽じゃなくあたしに向けられた。



 地黒の肌に吊り上がった目。



 薄い唇に、常に不機嫌そうなへの字口。



 見た目が逆なら良かったのにって思った事は何度もある。



 あたしだって女の子だし、「可愛い」って言われたい。



 だけどそんな事誰も言ってくれなくて、「元気がいい」とか「明るい」とか、そういう褒め言葉しかもらった事ない。



 そんなあたしの気持ちを太陽だけは分かってくれてて、「向日葵《ひまわり》ちゃん可愛いね」って昔から慰《なぐ》めてくれる。




 家が隣同士で幼馴染の太陽とは、小さい頃からいつも一緒。



 一緒にいるのが当たり前で、そこを不思議に思った事はない。



 これからもずっと一緒にいるんだろうし、こうやって比べられ続けるんだろうって諦め半分思ってた。



 その思いは年々酷くなり、年を追う毎に“可愛い”から“格好いい”になった太陽の隣にいるのが苦痛に感じた事もある。



 だけど今は完全に諦めた。



 もうどうでもいいやって思いの方が大きくて……それでもいつか“あたし”を見てくれる人がいるんじゃないかって淡い夢を抱いてる。




 まぁそんな淡い夢、ドブに捨ててしまえればいいんだけど……。

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