決闘の話



 長かった学園生活も最後の日を迎え。

 平民だと思ってた婚約者がこの国のお姫様だったりしたけども、実際会った婚約者の家族は本物の王様、王子様だったりしたけども(婚約者から聞いた)、無事に卒業出来ました。



 流石にいきなりお姫様を領地に連れて行く訳にはいかず、もう一回挨拶に行きますか。と婚約者と仲睦まじく歩いていたのです。



「おい!そこのお前!」



 折角の新しい門出なのに騒いでる人がいるみたいだね。もう学生気分で居るのは終わりなんだよー?



「ねぇ、エル?あいつ貴方の事を呼んでるみたいよ?」


「僕を?今から緊張でプルプルしてる僕になんの用事があるのさ」



 そう。僕は緊張しているのだ。1回挨拶に行った時以上に。

 しょうがないじゃないか。アンがお姫様だなんて全然気付いてなかったし。

 いくらエドワード王太子が王位を継ぐからって、お姫様が男爵に嫁ぐのを良しとするなんで考え辛いじゃないか。

 やっぱ無し!って言われないかドキドキしてもおかしく無いと思うんだ。



「姫殿下と一緒に歩いているお前だ!無視するな!」



 はぁ、なんだよもう。なんて思いながら振り返って見ると、アンに付きまとってた(アンから聞いた)公爵子息ではありませんか。

 結局、アンと相思相愛とか嘘がバレちゃってるのに結構ハートが強いのね。



「なんでしょうか?公爵子息殿。これから僕達はお城まで行かないといけないのですが」


「うるさい!男爵風情が姫殿下の婚約者なのは俺が認めん!」



 なんなのこの人。別にあんたに認められなくてもアンが認めてるんだからそれでいいじゃんよ。そんな面倒臭い事よりも僕の頭の中はなんて挨拶しよう?で一杯なのよ。



「私が私の意思でエルとの婚約を望んだのです。そうね。貴方の言葉で言うのなら、公爵風情が私の婚約に口を挟まないで貰えますか?」



 おぉ!アンが格好いい!流石に学園の外だと、面倒臭い上下関係が発生するから男爵の僕は弱いのだよ。良いぞもっとやれ。



「なな!しかし姫殿下!私は納得出来ません!私を納得させたいのならば、そこの男爵と決闘をさせて戴きたい!

私が敗れれば潔く身を引きましょう!」



 しません。既に婚約が成立してるのに、なんでわざわざそんな事しなくちゃいけないのさ。

 しかも、公爵子息の戦闘実技の成績、僕より全然下だった覚えがあるけども。



「いいですわよ?私もそろそろ貴方の顔を見飽きましたの。エルとの決闘で敗れたら、二度と私の前に顔を出さないと誓うのであれば、決闘を認めましょう」



 やるの?本当に?貴方の婚約者はやりたくないオーラ凄いですよ?

 まぁ、やらないでアンがいつまでも付きまとわれても迷惑だし、今の内にスッキリさせたいよね。多分だけど、アンは今まで我慢してきたから憂さ晴らしも入ってると思う。



「エル。やるからには本気でやりなさいよ。滅多くそにしてやりなさい」



 本気で?僕としては本気出さなくても余裕だと思うんだけどな。これってアン絡みだから、もしかしたらブレスレット外れるかも。

 アンにこのブレスレットの事話したっけ?ダナン家ではダナン領以外の場所では能力に制限が付くブレスレットをつけなきゃいけないって話。

 昔、ご先祖様が、有り余る力で、お偉いさんを怪我させちゃってから家訓で着けなきゃいけないんだってさ。

 着けてる人の大切な人の為なら外れるみたいだけども、父さんは、外した事ないって言ってたなぁ。あ、外れた。

 では、婚約者様に格好いい所でも見せますか。



 はい。決闘も終わりまして、無事に二人で歩いていますよ?

 え?戦闘描写?そんなんワンパンですよワンパン。なんだか強力な魔法具出して来て魔法比べしようとしたりしてたけど、結局走って殴ってぶっ飛んで学園の塀に頭突き刺さって終了。

 怪我?知らない。放置してきたから。アンは全然見えなかったみたい。気付いたらぶっ飛んでたって。

 その後、アンに苦笑いされながら、「エルって強いのね」って言われたよ。格好いい所見せるつもりだったのにな。



 まぁ、僕の決闘話はこんな感じ。この後、王様と王子様に会ったり、出てった筈の母親が帰ってきたり。色々あったけど、それはまた別の話。

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