ユグドラシル -創世の力と魔王の物語-

照屋

第1話

「創太。ありがとう。……もう、いいから。」


「アリア!アリア!アリアァァァァァァ!!!」


少年は一人叫ぶ。両腕は動かない。少女は一人、少年の側を離れヘリコプターへと乗り込む。


少年は一人叫び続ける。腕への拘束はもうない。それでも、アリアに伸ばした手は、届かない―――。


(伸ばした手は、届かないのか……)


(ふざけるな!何故!アリアが犠牲にならないといけない!何故!アリアが自由に過ごせない!)

(凄惨だ。不条理で不合理で、それでいて……理不尽だ。)

(…そうだよな?理不尽だよな?じゃあ、理不尽を越えるためには、理不尽で塗りつぶすしかない)


(ああ、そうだよなぁ?じゃあ、なるしかないよな?アリアを助けるためなら――

俺が、その、【理不尽】に)


こうして、中宮創太は、魔物を従える魔物の王。この混沌社会を終焉へと導く【魔王】へと。至るのであった。


これは、中宮創太がという人間が理不尽にも全てを奪われ、自らを理不尽へと至らせた者――【魔王】へと至る物語。

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