天雅剣の伝説
じゅんとく
第1話 はじまり①
遥か古の時代……まだ生まれたばかりの世界、その世界を原始人類達は『ファーラル』、(果ての大界)と意味で呼んでいた。
その目覚めた世界いは人類とは別の種族が共存していた。彼等には人類とは異なる箇所が1つ存在していた。それは……彼等には翼が生えていた。
全身を羽毛に覆われ、爪と口ばしの生えた異種族、鳥獣と呼ばれる種族だった。翼と手足の生えた彼等と、人類は、ファーラルで幾度と無く争い、そして……大地を血に染め続けた。
人類は、彼等に対して強力な兵器を編み出し、彼等を徐々に少しずつ追いつめて行く。
長い時間を掛けて、原始人類は人口拡大と天敵排除に尽くし、彼等の居場所を大陸の一角の隅まで追い詰めた……
しかし……そんな彼等にも、ある時期を境に変化が訪れた。
鳥獣の中に、人間の姿で翼の生えた一族が現れだしたのだった。
その美貌を纏めた容姿に、人類は戸惑い、そして……彼等を崇め始めるのだった。
彼等を人々は有翼人、『羽根人』と呼ぶ様になる。空を手にした彼等は、更に魔術や武芸に特化した者も現れ、何時しかファーラルにとって二分する程の勢力まで勢い尽くすのだった。
そんな彼等の中で、種族間同士による激しい派閥争いが勃発して……その後の彼等の命運が大きく塗り替えられてしまう。
それは……神の力によって与えられし神秘の金属によって造り与えられた、この世に2本しか存在しない『天雅剣』である。
原始人類から、発展した時代に、それを2本持ち合わせた者は、ファーラルにある大陸のほぼ全土を支配する程の巨大な帝国を造り上げた。
また……別の時代には、天雅剣の争奪を巡って、国同士が激しく衝突しあう程の争いが生じた。
その後、天雅剣は誰かが手にした後、忽然と歴史の表舞台から姿を消してしまう。
ある者は、完全に破壊された……と、言い。また、ある者は、王家の棺の中に眠って居る……と囁く。だが本当の真実を知る者は誰もいない……
激しい時代の流れの中、新たに誕生した『羽根人』も、時代の歴史の中に溶け込み、何時しか……その存在する数は減り続けてしまい。長い歴史の中で人々の記憶からは忘れられた存在へとなる。
やがて彼等の事を知る者さえ少なくなる頃……時代のうねりは、人々に恐怖と絶望を与える。歴史は再び大きな混迷の渦に吞み込まれて行く中、暗雲が大地を覆い、恐怖に震える人類は、闇を照らしファーラルに希望の光を照らしてくれる救世主を待ち望んだ。
……ある預言者は静かにこう語る。
『遥か異国の地により生まれし翼の生えた2人の少年たち。1人は、遥か遠くの大空を見上げていた。もう1人は、遥か遠くの地平線の彼方を見ていた……。彼等の目指す未来とは、果たして自由か正義か……。それとも栄光か繁栄なのか……?』
*
蒼天歴1024年……
小さな繁華街のはずれの居酒屋、少し古風な雰囲気の店……その飲み屋を営むのは年配の男性だった。夕方近くに店を開けて、夜明け近くまで営業して居た。
その日……何時もの様に店を開けて、まだ来店客が少ない時間帯に店の準備をしてる時に、店の扉が開いた。
「いらっしゃい……おや、久しぶり」
彼は来店した客に対して愛想の良い表情で来客を迎える。
店に入って来たのは30代位の背丈があり、男性でありながら長い黒髪を垂らした者だった。黒色のマントに身を包んだ男性はカウンター席に腰を降ろし、その横の床に大きな荷物をッドサッと置く。
「マスター、何時ものヤツをお願い」
「了解」
マスターと呼ばれた店の店主は、手慣れた作法で、酒を作り男性の居るカウンターへと酒の入ったグラスを置いた。
それを一口呑んだ彼は上機嫌になり、クイッとグラスの酒を飲み干す。
「もう一杯いくかね?」
「ふう……勿論さ、ここの酒が呑みたくて、異国の地からはるばる戻って来たんだ」
「ほお……と、すると……例の者を見付けたのか?」
その言葉に彼は首を横に振った。
「ダメだった……」
「そうなると、本当に見つかるのかね?」
「尊師が言うには、皇女フローレラ姫の子孫であり純粋な血統の子孫は居ると言われている。しかし……この広大なファーラルで、たった1人の者を見付けるのは困難を極めるよ」
「そうか……もう、どのくらい探したんだ?」
「5年だ」
「そうか……もう5年か、と言うと……あの動乱から、もう5年も経つのか……」
「ああ、俺は絶対に見付けてやるさ、天雅剣の担い手となる片割れの少年、白き翼、藍色の瞳の少年を……彼がこのファーラルの混乱に終止符を打つ者だと信じている」
彼が話していると、店の隅に居た吟遊詩人が歌を謳い始める。
『翼が生えているが天使では無い
空を飛べるが鳥では無い
昨日はここに居たが
今日はもういない
風の吹くまま
自由に空を飛び続ける
翼の生えた旅人たち』
「羽根人自体、もう見なくなったな……彼等は、まだ生きて居るのか?」
「羽根人には、これまで何人も会ったよ。ただ……尊師の言う者には中々出逢えないんだ」
彼は新たにマスターが作ってくれた酒を呑み、しばらくして金を払って店を出て行った。
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