第11話 有沙の誕生日
有沙の誕生日1週間前。俺は、ひまりに有沙への誕生日プレゼント選びを手伝ってもらっていた。
ちなみに彼氏である深にはちゃんと伝えてある。プレゼント選びしたいからひまりを借りることは。
本当は深も来る予定だったが、ボランティア部の活動があるらしく行けなくなった。
なぜいろんな部活がある中で深がボランティア部を選んだのか不明。俺も誘われたがバイトがあったので断った。
話を戻すが、有沙へのプレゼントは大型ショッピングモールへ行って買うことになった。
「どうしよう……」
雑貨屋に入り、いろんな商品を見て悩んでいるとひまりが何かを持ってこちらへ来た。
「千紘、みてみて」
そう言ってひまりが見せてきたのは綺麗な指輪だった。
「指輪?」
「これどうよ」
「どうよって……指輪って重くないか?」
重いし、誕生日プレゼントに指輪って何か変な誤解をさせそうな気がする。
「まぁ、確かに……じゃあじゃあ、ネックレスなんてどう?」
「ネックレスか……」
彼女に何を渡したら喜んでくれるだろうか。女子にプレゼントをすること事態、初めてではない。ひまりの誕生日に渡したりしているからだ。
「あーちゃんから欲しいものとかこっそり聞いた?」
「聞いたんだが何というか物じゃなくてさ」
聞いたのは昨日。夕食後、俺は彼女に怪しまれないように聞いた。
「有沙は、今、欲しいものとかある?」
「欲しいもの……ん~、特にないですね。してほしいことならたくさんありますけど」
「してほしいこと?」
そう尋ねると彼女はニコニコしながらソファの上にあったクッションを手に取った。
「千紘に膝枕してもらうことと頭を撫でてもらうことですかね」
「そ、そうか……今、膝枕してもいいけど」
「本当ですか!? してほしいです!」
彼女はソファからバッと立ち上がり、嬉しそうに表情をしていた。
それから膝枕をして結局、彼女が何をほしいかわからないまま終わった。
「というのが昨日の有沙とのやり取りだ」
「へぇ~、膝枕してあげたんだぁ~」
昨日のことを話すとひまりがニヤニヤしながら俺のことを見てきた。
「な、なんだよその顔は」
「いや、仲がよろしいことで。まぁ、何がほしいかわからなくても千紘が選んでくれた物ならどんな物でもあーちゃんは喜ぶと思うよ」
ひまりにそう言われてプレゼントを渡して喜んでくれる姿を俺は想像した。
「ありがとな、ひまり。ちょっと自分で考えてみるわ」
「うん、聞きたいことがあれば言ってね。アドバイスぐらいならできるから」
そこから俺は一通りいろんな店の商品を見て、いいと思った商品はひまりにこれはどうかと尋ねたりして無事、有沙への誕生日プレゼントが買うことができた。
「千紘が選んだプレゼント。あーちゃん、きっと喜んでくれるよ。まぁ、私が用意したプレゼントの方が喜んでくれると思うけどね」
ひまりも俺が選んでいる間に、有沙への誕生日プレゼントを買っていたらしい。
「俺の方が喜んでくれる自信がある」
「自信満々だねぇ。ところで、いつからあーちゃんのこと下の名前で呼ぶことになったの?」
「えっ……と、1週間前ぐらい」
「そうなんだ(やったね、あーちゃん、一歩前進だよ)」
ひまりと電車で帰り同じ駅で降りた。駅からお互い方向が違うのでここでお別れだ。
「ひまり、今日はありがとな」
「いえいえ、じゃあ、また明日学校でね~」
「あぁ、また明日」
ひまりと別れた後、スーパーに寄って帰り、夕食で必要なものを買うことにした。
***
有沙の誕生日当日。有沙、深、ひまりは、俺の家に集まった。
「あーちゃん、誕生日おめでとう!」
「誕生日おめでとう、月島さん」
「誕生日おめでと、有沙」
プレゼントを1人ずつ受け取った有沙は嬉しいのか泣きそうになっていた。
「皆さん、ありがとうございます! 大切にしますね」
ひまりがプレゼントとしたのは何かのストラップとお菓子だった。深は駅前にある有名店のクッキーだ。
「千紘、開けてもいいですか?」
最後に有沙は俺からもらったものを開けようとしていた。
「ど、どうぞ……」
どんな反応をするのか渡した側はドキドキしていた。
「ハンドクリームとこれは……ネックレス? 綺麗です」
彼女はネックレスを見てうっとりしていた。その表情から俺は目が離せないでいた。
(よ、喜んでもらえた……?)
「あーちゃん、千紘につけてもらったら?」
ひまりがそう言うと有沙がネックレスを俺に渡し、後ろを向いた。
「千紘、つけてもらえますか?」
つけやすいよう彼女は髪の毛を手で抑えてお願いしてきた。
「わ、わかった……」
ただネックレスをつけるだけなのに変に緊張してきた。そっーとゆっくりとネックレスをつける。
「……つ、つけたぞ」
「あ、ありがとうございます」
プレゼントに喜ぶ彼女を見ていると俺はあることに気付いた。
(あのヘアピンつけてるんだな……)
前にプレゼントとしたヘアピンをつけているのを見て俺は嬉しくてつい笑みがこぼれてしまいそうになった。
「千紘、ニヤけてる。喜んでもらえて良かったね」
ひまりが俺にだけ聞こえる声量で話しかけてきたので俺は頷いた。
プレゼントを渡し終え、俺はキッチンへあるものを取りに行き、それをテーブルへ運んだ。
「誕生日ケーキ。チーズケーキが好きって言ってたから作ってみたんだ」
「わぁ、美味しそうです!」
キラキラした目で彼女は作ったケーキを見ていた。
「食べていいよ」
「では、いただきます!」
パクっと一口食べてると彼女は幸せそうな表情をした。
「ん~、やはり千紘の作るものはどれも美味しいです!」
こうやって幸せそうに食べてくるから作りがいがあるんだよなぁ。
「千紘、ひまりさん、奥村さん、素敵な誕生日をありがとうございます」
お礼を言った彼女の笑顔は眩しくて、誕生日会は大成功したと言ってもいいものになった。
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