第5話 負けることの楽しさ

道場に通い始めてから数週間が経ち、詩廼は優太くんに負け続けていた。毎回、強い相手との対局に心が折れそうになりながらも、巴と一緒に通うことは楽しかった。


ある日、道場の帰り道、詩廼はふと不安を感じた。


詩廼 「巴、私、もう将棋をやめようかな…」


巴は驚いて詩廼を見つめた。


巴 「どうして?詩廼、ずっと頑張ってたじゃん!」


詩廼 「でも、負けるばっかりで、全然楽しくない。これ以上続けても意味ない気がする。」


巴は少し考え、思い出したことを口にした。


巴 「優太くんが言ってたよ。負けることも楽しいって。」


詩廼は不思議そうに首を傾げた。


詩廼 「負けることが楽しいって、どういうこと?」


巴は励ますように微笑んだ。


巴 「負けた時こそ、次にどうするかを考えるチャンスだって。勝つために努力するのが、楽しいんじゃない?」


詩廼はその言葉に心を動かされ、優太くんに話を聞いてみることにした。


翌日、道場で優太くんを見つけると、詩廼はすぐに声をかけた。


詩廼 「優太くん、負けることが楽しいって本当?」


優太くんは驚いた様子で詩廼を見つめた。


優太 「もちろん!負けることから学ぶことがたくさんあるからね。」


詩廼 「でも、負けるのって本当に辛いんだ。」


優太くんはしばらく考えた後、優しく言った。


優太 「確かに、負けるのは悔しいし、辛いよね。でも、その悔しさが次の勝利に繋がるんだ。負けることで新しい発見があるし、次はどうやって勝つかを考えることができる。」


詩廼はその言葉に耳を傾けながら、自分の中の葛藤が少しずつ解消されていくのを感じた。


詩廼 「そうか…負けることにも意味があるんだね。」


優太 「そうだよ!勝ち負けだけじゃなくて、対局そのものを創造することが大切なんだ。」


その言葉に、詩廼は少し勇気をもらった気がした。


詩廼 「ありがとう、ゆうたくん。もう少し頑張ってみるよ。」


優太 「それでこそ、詩廼!次の対局、楽しみにしてるから!」


道場を出るとき、詩廼は心の中で決意を固めた。負けることを恐れず、将棋を創造することを大切にしていこうと。


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将棋と恋 紙の妖精さん @paperfairy

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