第1話 ゲームの始まり

俺たちはいつの間に寝ていたのだろうか。


 夜の都心の煌びやかなネオンを窓越しに映し出していた高層マンションの一室。



気がついた時には、

一面真っ白な不思議な部屋へと変貌していた。


部屋の中に響くエニグマの冷たい声が、参加者たちの心に恐怖を刻み込んだ。ユウは冷静を装いながらも、内心では緊張と不安が渦巻いていた。彼は周囲を見渡し、他の参加者たちの表情を観察した。皆、同じように困惑と恐怖を隠しきれないでいた。

「まずは自己紹介をしよう」と、ユウは提案した。「お互いのことを少しでも知っておいた方がいい。」

参加者たちは一瞬ためらったが、やがて一人ずつ自己紹介を始めた。アヤは冷静な声で自分の名前と職業を述べ、ケンジは短気そうに自分のことを話した。ミサキは科学者であることを明かし、タカシは家族を守るためにここに来たと語った。

「さて、次に何をすればいいんだ?」ケンジが苛立ちを隠せずに言った。

その時、部屋の中央にあるテーブルの上に、一枚の紙が現れた。ユウがそれを手に取り、読み上げた。


*問*


一本の直線だけを使い図形を作図せよ


最初の試練は、問題に答えて次の部屋への鍵を見つけることだ。

時間は3分。

失敗すれば、全員が命を失う。

以上。



紙にはそう書かれていた。


参加者たちはこのシンプルな指示に戸惑いを隠せなかった。アヤが紙を手に取り、考え込んだ。


「一本の直線だけで図形を作るって、どういうこと?」

アヤが疑問を口にした。


時間が刻々と過ぎていく中、ケンジは焦りを募らせていた。「早くしろよ!時間がないんだ!」

「落ち着け、ケンジ」とユウが言った。「焦っても何も解決しない。」


ミサキが突然、顔を上げた。


「普通に考えれば、一本の直線だけで図形を作るのは不可能に思えるわね。

普通に考えればね」とミサキが冷静に答えた。


部屋の中に緊張が走った。


ミサキは続けた。

「でも、これは位相数学の概念を使って解くべき問題よ。」



ユウが興味深そうにミサキを見つめた。「どういうことだ?」


ミサキは紙とペンを取り出し、説明を始めた。「位相数学では、直線を曲げたり、ねじったりすることができるの。つまり、一本の直線を使っても、特定の図形を作ることができるのよ。」


彼女は紙に一本の直線を描き、それを円の形に曲げた。「例えば、これが円よ。直線を曲げることで、円を作ることができる。」


アヤが驚いた表情でミサキを見つめた。

「なるほど、そういうことね。」


ミサキはさらに説明を続けた。

「この問題の答えは、直線を使って円を作ること。これが位相数学の基本的な考え方なの。」


ユウが頷きながら言った。

「つまり、直線を曲げて円を作ることで、この問題を解くことができるんですね。」


ミサキは微笑みながら頷いた。「そうよ。これが答え。」


ユウはミサキの解答を確認すると、すかさずテーブルの下に隠された鍵を見つけ出した。


「あったぜ!」

ユウが叫んだ。彼はテーブルの下に隠された鍵を見つけ出した。


「やった〜♪」

アヤが喜びの声を上げた。

しかし、その瞬間、部屋の一部が突然崩壊し始めた。ケンジが焦ってトラップを作動させてしまったのだ。彼らは急いで次の部屋へと進むしかなかった。

次の部屋にたどり着いた彼らは、再びエニグマの声を聞いた。


「よくやった。しかし、これからが本当の試練だ。互いを信じるか、疑うか、それはあなたたち次第だ。」


ユウはアヤの手を握りしめ、決意を新たにした。彼らの戦いはまだ始まったばかりだった。

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