夢と現実の狭間で~夢見る者たちの覚醒~
藍埜佑(あいのたすく)
第1章 - 繰り返す夢
私、美智子は、いつも同じ夢を見ていた。夢の中で、私は見知らぬ街を歩いている。古い木造の家が立ち並ぶ、どこか懐かしさを感じさせる街だ。道の先には、大きな時計塔が見える。時計の針は、いつも3時を指している。その時計塔の前には、長い黒髪をなびかせた女性のシルエットが立っている。私は彼女に近づこうとするが、いつも目が覚めてしまう。
目覚めると、私は自分のアパートの一室にいた。窓から差し込む朝日が、部屋の隅に山積みになった原稿用紙を照らしている。私は作家だ。小説を書くことが、生きがいであり、仕事でもある。しかし最近は、なかなか筆が進まない。夢に見た街のこと、そして時計塔の前に立つ女性のことが、頭から離れないのだ。
私は、コーヒーを一杯淹れながら、夢について深く考えた。この夢には、何か特別な意味があるのだろうか。それとも、単なる創作の行き詰まりから来るストレスの現れなのだろうか。
数日後、私は決心した。夢に出てきた街を探すことにしたのだ。もしかしたら、その街を訪れれば、私の創作の行き詰まりが解消されるかもしれない。私はインターネットで検索を始め、夢の中の街に似た場所を探し始めた。
驚いたことに、私はすぐにその町を見つけることができた。夢の中の街にそっくりな、小さな町が実在したのだ。その町は、都心から電車で3時間ほどの場所にあった。私は迷わず、その町に向かうことを決めた。
荷物をまとめ、電車に乗り込む私の胸は高鳴っていた。これは単なる偶然なのだろうか、それとも運命の導きなのだろうか。窓の外を流れる景色を見ながら、私は深く考え込んだ。
町に到着すると、私は愕然とした。目の前に広がる光景は、まさに夢の中で見たものと同じだったのだ。古い木造の家、石畳の道、そして道の先には、あの時計塔が聳えている。私は息を呑み、ゆっくりと町の中心部へと歩み寄った。
時計塔に近づくと、そこには黒いかわらが緩やかなカーブを描いて続く小道があった。その先に見える町並みに、より強い既視感を覚えながら、私は小道を歩き始めた。心臓の鼓動が早くなる。この先に、あの女性がいるのだろうか。
そのとき、不意に背後から声をかけられた。
「あなたも、この町に呼ばれたのですね」
振り向くと、そこには銀髪の老婆が立っていた。彼女は優しげな笑みを浮かべ、私を見つめている。その瞳には、何か神秘的な輝きがあった。
「呼ばれた、と仰いますと?」私は戸惑いながら尋ねた。
老婆は静かに頷いた。「夢で、この町を見たのでしょう? あなたのような人たちが、時々ここを訪れるのです。この町は、夢と現実の狭間に存在しているのかもしれません」
老婆の言葉に、私は言葉を失った。夢と現実の狭間――。その言葉が、私の心の奥底に眠る何かを呼び覚ましたような気がした。
「私の名前はユメコ。あなたを待っている人がいます。ついてきてください」
そう告げると、ユメコは小道をさらに奥へと歩いていった。私は戸惑いながらも、彼女の後を追った。小道の先に、私の運命が待っているような気がしたのだ。
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