#13 精鋭凸凹カルテット/深山風護
「じゃあ改めて――僕が分隊長でガンナーのヒデレッド」
「はい、私がコアメンでアタッカーのトモエトワールです」
まずはおなじみの面々、続いて。
「ども、俺がディフェンダーのオシムラマンジュウっす」
壁役ニキ、やはり壁役だった。生域で換算すれば100キロは越えていそうな丸っこいフォルムに、これまた丸い眼鏡が光る。半袖短パンのラフな装いは、今にもサイリウムを取り出しそうだ。いや偏見だけど。
「見るからにオタクだって思った君は大正解やで」
「いや別に、」
「フォカヌポウ!」
「……あの、狙ってますよね?」
豪快に笑うオシムラ、こういう芸人キャラのムードメーカーなのだろう。親しくしようという意図はよく伝わった、なら風護も乗らせていただこう。
プロフィールを見るとゴスキルは〈補助類・自己強化系・フィジカル群・シェル耐久力増大・A【マンジュウ・バリア】〉とのこと。
そして、問題の四人目。中学生くらいか、学校指定と思しき紺色ジャージの女の子。すぐには声をかけてくれなかったのでゴスキルを確認。〈補助類・支援系・衛生群・霊胞修復型・A+【キズキエール】〉――傷が消えるとエールの掛詞だろうか。
「……はい、ヒーラーのキヨノエルです」
斗和の腕をホールドしたまま、明らかに他人行儀な声で挨拶される。
「あの……キヨノエルさん、俺とどこかで会いましたか?」
「いえ、あの現場が初めてです」
「その節はありがとうございました、それで……」
「――あはははははは!!」
いびつな空気をぶっ壊す、斗和の大爆笑。
「もうノエル~! 機嫌直して~!」
斗和はキヨノエルの頬を両手で挟んでむにむに、キヨノエルは「トワちゃん……!」と頬を紅潮させている。
「ええ……?」
突然の百合百合しい展開に呆然としている風護に、オシムラが声をかける。
「説明しよう。このキヨノエルはトモエトワールの大ファンなのである、厄介オタクの夢女子とも言っていいね」
「はあ」
それ3つ並べるのどうなんだ。
「なので、トワ相手に出会って一分でホウヨウしたミヤマ少年にご立腹なのだよ」
「ホウヨウ……え、ハグの抱擁ですか? そんなのないですよ、なんのことです?」
「あ、見せてなかった。風護くんCIPS見てみて」
斗和から送られてきた画像を見て血の気が引く。アケビモエカとの戦いの直後だ、倒れ込む風護を斗和が抱き止めている。そういえば斗和と話している途中に意識が落ちたような気がしたけど、こんなになっていたのか。事故とはいえこの距離感はマズ過ぎる。
「あのすみません斗和さん」
「大丈夫だよ、ノエルの嫉妬が」
「触ろうとかそんなことは全然、これから絶対気をつけるんで、」
「風護くん!」
大声で呼びながら、斗和は風護の肩を掴む。
「大丈夫、私は嫌じゃない。私の言うこと、信じて」
斗和のまっすぐなまなざし。不思議と心を落ち着かせてくれる声。
「必死に頑張った新人に寄り添ってあげたいのは先輩の人情だよ、男女どっち相手でも私はそう思う」
「……はい、信じます」
「OK。ノエル、ちゃんと挨拶」
キヨノエルは風護の前に歩み寄ると、ぎごちなくお辞儀。風護からも返礼。
「ミヤマさん、失礼な態度取ってすみませんでした」
「いえ……よろしくお願いします、キヨノエルさん」
「はい。それはそうと女子ファン代表として、トワちゃんと男性との距離感に警戒は続けます」
「あっはい」
華奢で気弱そうに見えて強火すぎる百合の子だった。変に焚きつけないと心に誓う。
「これでよし――ノエル、心配してくれてありがとうね」
「トワちゃん……天使……」
うっとりとしているキヨノエルを面倒くさそうに見上げた後、ヒデレッド隊長は紹介を締めくくる。
「何回かメンバーチェンジを経て、今はこの4人でトワール分隊だ。3特対クロナギ中隊所属の近接特技分隊、敵対するゴスキル使いへと殴り込む担当だね」
改めて四人を見回す。
リーダー、特撮風ユニフォームの男子小学生。
エース、刀を操るゴスロリ軍服JK。
タンク、芸人肌の巨漢オタク。
ヒーラー、中学の教室に居そうなジャージ女子。
「……ここまでビジュ的にデコボコなチーム、アメコミでもなかなか見ませんよ」
「けど私とトワちゃんはまるで姉妹だって、分かってますねミヤマさん」
キヨノエルが何か口走ってるが無視。
「手前味噌を失礼、これでも接近戦にかけては日本旅団トップクラスのチームなのよ」
オシムラの説明に、斗和は小さくピースサイン。ここで風護に疑問が湧く。
「あの、皆さんの任務って戦闘ですよね。離反者とか解放同盟が相手の」
頷く分隊の皆さん。
「俺みたいな新人のケアまでやるの、忙しすぎやしません?」
「実は俺たち、今日はローテ的には非番なのよ。オフやね」
オシムラから衝撃の回答。
「えっ、オフの日なのにいいんですか」
「私は風護くんのゴスキルめっちゃ気になってるから!」
「俺もまあ暇だし」
「トワちゃんとお仕事デートならOKです」
部下3人からそれぞれの回答……お仕事デート?
そして分隊長からは、より真面目な話が。
「それに、非公式のスカウトというか、パイプ作りも兼ねているんだよ。正式な配属決めに入る前に、いつかウチに来てねってアピールするための」
「それは……俺をこのチームにってことです?」
かなりの実力者集団なんでしょ? 新人を大抜擢すぎないか?
「いずれ、ね。さすがに初配属がここってのは厳しいから、別の隊で経験を積みつつ目指してくれたらって感覚……まあそれも、君の資質次第だけどね」
いつのまにか、周りには人だかりができていた。見回しつつ、ヒデレッド隊長は告げる。
「さて、ギャラリーも揃ったところで。ニューフェイスのショータイムといこうか」
……この人、ちょっと格好つけたがりでは?
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