GhosKill~幽霊軍隊の最強剣姫を救う、青春崩壊DTの戦記~

いち亀

第1章 She Is The Ghost Kills Ghosts.

1-1 命の賭け時-深山風護の最期-

#1 初恋が導いた人生の先は、/深山風護

「ふうくんは、ミカがまもってあげる!」


 凜々しく背筋を伸ばして気高く言い放つ彼女の姿が。深山みやま風護ふうごにとって、恐らく最も古い記憶だ。

 あずさ実風みか。風護と同じ社宅に同じ年、5ヶ月ほど早く生まれた女の子。空想に片足を突っ込んだまま周りから浮いていた風護のことを、弟のように叱っては庇ってくれた幼なじみ。


「実風ちゃん、風護のことよろしくね」

 幼稚園の送迎バスに乗るとき、母は実風に手を合わせていた。

「はい! ふうくん、ミカのて、はなしちゃダメだよ」

 前を見て歩くことすら忘れがちだった風護を。転ばないように、ぶつからせないように、まっすぐに導いてくれる小さな手だった。


 背が伸びても手が離れることはなく、しかし意味合いは着実に変わっていく。姉弟から友達へ、そして異性へ。ときに照れ臭くて、ときに口うるさくて、時々は振り切ろうともしたけれど。

「風護はどうするの? 別に勉強好きじゃないでしょ」

 実風が中学受験を早くに決めたと聞いて、実風のいない学校生活を想像して。

「……俺も目指したい。実風と一緒に」

 無謀なチャレンジに踏み出してしまえるくらい、離れがたくなってしまった。


 実風と一緒にいたい、実風にふさわしい人間でありたい。その一念で、風護は大人たちが驚くほどの変貌を遂げた。

 そして、晴れて二人での合格を決めた日のこと。


「けど風護、なんであんなに頑張れたの?」

 大人たちにはごまかしていたけれど、本人にはちゃんと伝えたかった。

「もう実風と同じ学校に行けないの、嫌だったし」

「……風護、そんなに私のこと好き?」

 実風はからかうようだったけど。ここを逃すと当分言えない気がしたから。

「好きだよ、すごく。だから、付き合ってほしい」


 実風は口をぽかんと開けて、それから頬を赤くして、けどやっぱり背筋を伸ばして。

「うん、改めてよろしくね。私も好きだよ、風護のこと」

 それから風護に抱きついて、耳元で囁く。


「風護が守ってね、私のこと」

 もう自分とは全く違う方向へと変わっていく、彼女の体を受け止めながら、誓う。

「実風を、一生。守れる男に、なるから」


 その言葉を絶対の指針にした風護は。

 高2の夏、他生徒への傷害事件の加害者として退学処分となった。

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