第一章 第七話 不思議な体験

 私はなんとなく手に取った本を読んだだけだった。ぱらりと1ページめをめくった瞬間……。

「―――え?」

 何が起こったのか分からなかった。本が、光った?眩しくて何も見えない。

「…?誰かいる?」

光の先に、人影が見えた。女の人だと思う。誰なの?あなたは、誰?

「…め。き……だめ!」

「え?『だめ』?――っ!?」

また眩しくなった。何が起こったの?

 私にはこの時間が1分間程に短く感じた。

〜〜〜

 「桜田さーん!ごめん、先生に捕まっちゃって遅くなっちゃった!」

「…あ、はい。なんかあったんですか?」

ふと時計を見ると、え、もう1時間もたってる!さっきの本はここにある。そっと開いてみたが何も起こらない。さっきのは夢?

「えーっとね。『赤点取りすぎだから今回のテストで赤点取ったら進学出来ない。』って。やばいかな?」

「それ結構やばいですよ。頑張りましょう!」

「うん、進学したいしねー!あ、そういえば昨日抜き打ちテストがあったんだけど、桜田さんとやった問題がでたんだ。おかげで0点回避だよ!」

「役に立ったなら何よりです。」

ていうか先輩今まで0点だったの!?うーん。教え甲斐がある。

〜〜〜

 「明美!放課後健太先輩と密会して付き合ってるって本当!?」

…は?

「えーっと?なんの事?」

図書室での勉強会の事かな?密会なんてしてないし。どこかから噂でも聞いたのだろう。

「何って!もう学校中の噂だよ。で、本当なの?めっちゃ羨ましいぃぃぃ!」

「そ、そんな、私は先輩に『勉強教えて』って言われたからやってるだけだよ。前も言ったでしょ?密会じゃないよ。」

まさか学校中の噂なんて!どうしよう。今さら全校生徒訂正出来ない。やばいかも…。

 ここは先輩に頼って何とかしてもらおう。

***

 「おい、健太!お前本当モテるよな。」

「…は?」

まじでなんの事?

「いや、なんの事ってw。お前放課後図書室で1年の女子と会って付き合ってるんだろ?ホント羨ましいわ。」

 えええ、もう噂広まってたのか。どうやって誤魔化そう。こいつ、一度噛み付いたら離さない系男子なんだよな。

「いやいや、別に勉強教えてもらってるだけだよ。」

「いいな、どうせ『私が教えます』とか言われたんだろ。」

「いや、俺から頼んだ。桜田さん頭めっちゃ良くてさ、2年の問題もスラスラ解けんのよ。まじ助かる。」

「…は?お、お前から頼んだの?まさかその人のこと……?」

「い、いやぁ〜。そそそんな事無いよ。」

「…ふうん。ま、イケメンの健太が女子好きになるわけ無いか。じゃ。」

 うわっ。危なかった。もう少しでバレるところだった。

 ここは桜田さんに頼ろう。

***

 あれぇ?先輩いないぞ。どこに行ったのだろうか。私はとりあえず校舎内をぐるぐるまわった。

「あ、みこ!やっほー。どうしたの?暗い顔して。」

「明美…!話があるの。ちょっと来て…。」

 これが私とみこ史上最大の事件となる。







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