第一章 第五話 迫りくる定期試験

 市立東丘中学校の定期試験は四回ある。そのうちの第三回目が残り一週間に迫っていた。

「明美ぃ!理科教えて下さい!私超ピンチ!助けて!」

この時期になると必ずみこが助けを求めに来る。だから、下準備をしてきていた。

「はいっ、この参考書とっても分かりやすかったよ。貸してあげるから、自力でやってみな。どうしても分からなかったら教えてあげる!」

「ありがとうございます!さすがだねっ!」

別に、みこに最初から教えても良いのだが、私は私の勉強がある。私だって学年一位を守り続けたいという位のプライドはあるので、しっかり勉強したい。

***

 「お~い、健太!何ぼーっとしてんだよ!もうすぐ定期試験だぞ?勉強大丈夫なのか?」

「…あ、ああ。試験大丈夫な訳無いよ。」

本当だった。俺はいつも学年五十位(百人中)以内に入れていなかった。さすがの俺だってピンチは感じていた。誰かに教わりたい。

***

 大変だ。うっかり図書室で勉強していたらもう六時になっていた。早く帰らないと母に心配をかける。その時―――…。

「ああっ!やば。もう六時だわ。」

え!?誰?こんな時間にまだいるの?

「あの…。誰かいますか?」

「っうわあ!びっくりし…!!!」

「け、健太先輩!?」

まさか健太先輩が居たなんて。

「君、名前は?今度勉強教えてくれない?」

「え?さ、桜田明美です。勉強…?私一年ですよ?」

私なんかに二年の勉強が分かるわけ無い。

「じゃあ、桜田さん、俺に勉強を教えてくれ。頼む!できる範囲でいいから!」

「え、あ…。出来る範囲でいいなら…。」

言ってしまった。もう後には引き返せない。

「ありがとう!助かるよ。じゃ、明日の放課後四時にここで。また明日☆」

…え?どうしよう。これ、私の勉強時間少なくなる?困ったぁ!でも、先輩の役に立てるなら、まぁ、いいかな。

 私は少し明日を楽しみにしていた。

***

 よっしゃ!桜田さんに勉強教えてもらえる!大進化だ、俺。でもめっちゃ恥ずかしかったな。顔、赤くなってなかったかな?

 俺はとても明日を楽しみにしていた。

***

 「えぇぇぇ!?明美、健太先輩に会うの?羨ましい!」

みこに言ってみたら「羨ましい」と言われた。そうなのだろうか。他人の恋心、分からん。

「会うって言っても勉強教えるだけだよ。」

「それは明美が頭良いからでしょ?私、頭良くないもん!明美みたいに勉強出来る人に生まれたかった!」

「そう言われても…。」

「まあ良いよ!明美、明日感想聞かせてね。絶対だよ☆」

…行っちゃった。早めに図書室行こうかな。



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