プールの少女

第19話 旅行最終日

早朝、時佳は目が覚めると、まだ静まり返った旅館の庭へと足を運ぶ。冷たい朝の空気が肌を包み込み、深く息を吸い込むと清々しい感覚が体を満たしていく。庭の苔むした石や、池に反射する朝日が、まるでこの静けさを象徴しているようだ。

時佳（心の声）

「もう帰るのか…。もっとこの場所にいたい気がするな。旅の終わりはいつも少し寂しい。」

庭を散策しながら、彼女はこの旅で感じたことを思い返す。時間が止まったかのようなこの瞬間を、心に刻みつけていた。

旅館の最後の朝食を、里菜と共に楽しむ。味噌汁の香りが漂い、和やかな雰囲気が広がる中、二人は旅の思い出を振り返る。

里菜

「今までで一番楽しい旅行だったかも。」

時佳

「私もだよ。ここに来ていろんなことを考えたし、新しい自分を見つけられた気がする。」

和食の一つ一つを噛みしめるように食べながら、彼女たちはこの旅が与えてくれた豊かな経験に感謝した。

食後、二人は旅館の周辺を散策し、お気に入りの場所を再訪する。静かな小道や、昨日訪れた美術館を歩きながら、別れを惜しむようにこの場所と対話する。

里菜

「あの美術館、また来たいな。」

時佳

「うん、私も。ここにはもうたくさんの思い出が詰まってるから。」

風景を心に焼き付けるように、二人は歩き続ける。次に訪れる日を心の片隅で願いながら。

チェックアウトの時間が近づき、時佳は荷物をまとめる。鞄に入れる思い出の品を手に取るたびに、心に旅の記憶が蘇る。

時佳（心の声）

「この旅で得たものを、これからの私の生活にどう活かしていこうか…。少しずつでも、確実に前に進んでいける気がする。」

彼女は静かに荷物を閉じ、深呼吸をして、最後の時間を穏やかに過ごした。

旅館の外に出ると、二人は最後の記念に写真を撮ることにする。笑顔を浮かべながら、カメラのシャッター音が響く。だが、その笑顔の裏には少しの寂しさが漂っている。

里菜

「この瞬間、絶対に忘れないようにしようね！」

時佳

「うん。ずっと大切にするよ。」

二人は肩を並べ、ゆっくりと旅館を後にする。

帰りの列車の中、車窓に流れる風景を眺めながら、二人はこれからの夢や旅の感想を語り合う。窓の外には、次々と変わる景色が映り込み、その移ろいが旅の終わりを感じさせる。

時佳

「もっといろんな場所を訪れて、たくさんのことを見たいな。」

里菜

「私も！次は一緒にアートの旅に行こうよ。もっと多くの美術館やギャラリーを巡りたい。」

時佳

「それ、最高だね！」

未来の夢を描きながら、二人はこの旅がどれほど自分たちに影響を与えたかを実感する。

自宅に戻った時佳は、部屋の中に響く静けさを感じる。旅の喧騒がまだ耳に残っているが、その一方で心の中は満たされている。

時佳（心の声）

「この旅は、本当に素晴らしかった。これからも、自分をもっと大切にして、いろんなことに挑戦していこう。」

彼女は荷物を部屋に置き、窓を開ける。これから始まる新しい日常が、旅で得た力と共に鮮やかに広がるように感じられた。