第17話 旅行当日
朝日がまだ薄暗い空を照らし始める頃、時佳はアラームの音で目を覚ました。今日が旅行当日であることを思い出すと、一気に眠気が吹き飛び、心が高揚感で満たされた。ベッドから飛び起き、準備に取りかかる。窓の外を見やると、少し冷たい風が秋の気配を運んできていた。
時佳は鏡の前に立ち、服装や持ち物を最後に確認する。自分の姿を映しながら、小さな微笑みを浮かべる。
時佳 (心の声)「今日は特別な日。何か素晴らしいことが待っているかもしれない。」
荷物を肩にかけ、玄関のドアを開ける瞬間、期待感がピークに達した。新しい冒険が始まることを実感しながら、一歩外へ踏み出した。
駅に到着すると、里菜がすでに待っていて。久しぶりに外で会う友達の笑顔に、自然と心が弾んだ。二人は笑顔を交わし、互いの荷物を確認し合う。
里菜 「忘れ物はない?」
時佳 「大丈夫!バスの時間もちゃんとチェックしたし、準備は万端!」
里菜は頷き、安心したように笑みを浮かべる。少し早めに到着したので、ホームのベンチで話をしながら時間を過ごす。旅行前の静かなひとときが、これから始まる冒険への期待をさらに膨らませた。
バスに乗り込み、二人は窓際の席を取った。エンジンが動き出すと同時に、外の景色が少しずつ変わり始める。都会の喧騒が次第に遠ざかり、広がる田園風景に心が和む。
時佳は窓の外をじっと見つめながら、旅のこれからを思い描いた。
時佳 (心の声)「この旅で何を感じるんだろう。新しいことに挑戦できるかな。」
里菜と交わす言葉は少なくなったが、二人ともその沈黙が心地よい。新しい場所、新しい体験が二人を待っているのだ。
バスが目的地に到着すると、古き良き日本の趣を感じさせる旅館が二人を迎えた。木造の建物に、緑豊かな庭園が美しく広がっている。チェックインを済ませると、荷物を部屋に置き、すぐに外へと出て散策を始めた。
里菜は息を飲むように景色を見渡し、目を輝かせている。
里菜 「すごく綺麗な場所だね!早く温泉に入りたい!」
時佳も同意して頷く。二人は自然の静けさと旅館の穏やかな雰囲気に心が満たされていく。
それぞれのやりたいことが違うため、昼間は別行動を取ることに決めた。里菜はハイキングへ、時佳は美術館へ向かう準備をしながら別れ際に約束を交わす。
時佳 「じゃあ、また夕方に旅館で会おうね。」
里菜 「うん、楽しんで!」
二人は軽く手を振り合い、それぞれの目的地に向かって歩き出した。異なる経験を積むことで、旅が一層充実したものになるという予感がした。
時佳は小さな美術館に到着し、地元のアーティストたちの作品が並ぶ展示をじっくりと見て回る。作品の一つ一つが、アーティストたちの思いや感情を表現していて、心に深く響くものがあった。特に一枚の絵が時佳の足を止めた。
時佳 (心の声)「この作品には何か特別なものがある…私もいつか、こういうものを作りたい。」
その絵の前に立ち尽くし、しばらくの間、作者の感情と自分自身の感情が重なるような感覚を味わった。芸術はいつも、言葉にならないものを心に伝えてくれる。
夕方、旅館に戻ると、里菜がすでに部屋で待っていた。二人はそれぞれの一日を語り合う。主人公は美術館での感動を、里菜は自然の中でのハイキングの魅力を楽しげに話す。
時佳 「美術館は本当に素晴らしかったよ。心が豊かになった感じがする。」
里菜 「私も自然の中で過ごして、心がすごくリフレッシュしたよ。静かで、空気もすごく澄んでて。」
それぞれが体験した異なる世界が、また新しい形で二人を結びつけていく。二人の笑顔が、旅の成功を物語っていた。
夜が訪れ、旅館の夕食が始まる。地元の食材を使った豪華な料理が並び、二人はその美味しさに驚きながら、話が尽きることなく続いた。食べながら、これからの夢や次の旅のことについても語り合った。
里菜 「今日の話、また明日も続けようよ!」
時佳 「うん、もっと話したいことがあるから。」
二人は目を合わせ、笑い合う。旅はまだ始まったばかりだが、すでに心に残る思い出ができていた。温かい料理と共に、その思い出はますます豊かなものへと変わっていくのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます