第10話 約束だよ、いざという時は私を助けてよね?
「……買っちゃったよ」
「でも、後悔がないならいいんじゃないかな?」
「う、うん。後悔はしてないけど。今月のお小遣いをかなり使っちゃったし。月末までは節約生活かな」
二人は街中のアクセサリショップから外へ出る。
幼馴染の
「はい、これ、お揃いのサクランボキーホルダーね」
彩芽は渡してくるのだ。
それを真幸は受け取り、まじまじと見やる。
「よくよく見ると綺麗な色だよね」
サクランボキーホルダーは赤く光っている。
でも、真っ赤な色合いとかではなく、どちらかといえば薄い感じの赤色で、クリア色に近い感じだ。
作るまで結構な時間を要した感じがして、真幸は目を輝かせ、さらにじっくりと見やるのだ。
「どう、気にいってくれた?」
「うん。ありがと。大切にするよ。でも、一個千円もしたんだし。俺からもお金を出すよ」
「いいよ。それはいつものお礼だと思って受け取っておいて」
「でも」
「だったら、私が困っている時に助けてくれればいいから」
「わ、分かった。そういうことで受け取っておくよ」
真幸は、その時点で幼馴染と約束を交わしたのだ。
「じゃあ、またね」
「うん」
真幸は、幼馴染とは街中のアーケード街の入り口で別れた。
幼馴染は帰路に付き、真幸は再び街中から少し離れた先にあるデパートへと向かう。
先ほど妹の
真幸はそのデパートに向かって歩いており、丁度目的地に到着した頃合いだった。
真幸はデパート一階から入り、地下一階の総菜エリアに、エスカレーターを使って移動する。
地下一階では総菜を中心に売り出されているのだが、その他にはちょっとしたレストランもあるのだ。
総菜やレストランの他には出店みたいなものまであり、店員の活気のある声が響いていた。
その場所を歩いているだけでも、お店からの料理の匂いが漂ってきて自然とお腹が膨れてくるようだった。
「えっと、購入するのが……フライドポテトとフライドチキンか」
真幸はスマホを片手に、妹から送られてきたメッセージを確認していた。
場所的に、ここかな。
「すいません、注文いいですか」
「はい、お伺いします」
真幸が会計のところで注文しようとした時、どこか聞き覚えのある声がして、ハッとするようにスマホから顔を離すように上げた。
「真幸?」
「美蘭こそ、どうしてここで働いてるの?」
互いに驚きの声を出す。
「しッ、ここでは声を抑えて」
「ご、ごめん。でも、どうして?」
真幸は
「なんでって。私、バイトをしている時もあるって言ったでしょ」
「そういえば確かに。でも、ここで働いてたんだね」
「そうよ。あんまり他人にはバレたくないし」
二人で会計カウンターを挟んで会話していると、店の奥の方から店長らしき人がやってくる。
「話し声が聞こえてたけど。こちらのお客さんは、美蘭の知り合い?」
その店長らしき男性は白色のコック衣装を身につけ、頭にはシェフ特有である帽子――スカーフをつけていたのだ。
「はい。でも、すいません。バイト中に話してしまって」
「いいよ。お客さんとのコミュニケーションは大事だからね。でも、ずっと会話するのはよくないけどね。それより、美蘭はもう上がる?」
「え、でも、あと一時間ほど残ってますし」
「いいよ。上がりなよ。今日は頑張ってくれたんだし」
「ありがとうございます」
美蘭は店長に対して頭を下げていた。
美蘭がお店のバックヤードで着替えている際に、真幸は会計カウンターで、妹から頼まれていたフライドポテトとフライドチキンを購入するのだった。
「真幸も珍しいね。こんなところに来るんなんて」
「たまたま街中に来る用事があってさ。それと、これは今日の夕食で妹から頼まれてたんだ」
「へえ、そうなんだ。今日の夕食用なんだね。私の方はどうしよ。全然決まってないよ」
街のデパートから離れた夜道を、二人は家の方面まで向かって歩いている。
そんな中、美蘭は夕食をどうしよかと考え込んでいたのだ。
「だったら、今日は俺の家に寄って行く? 結構多めにフライドチキンを購入してさ」
「いいの? でも、迷惑にならない?」
「そんな事はないよ。今日、両親は仕事の都合で帰ってこないと思うし。好きに過ごしなよ」
「じゃあ、お邪魔しよっかな」
美蘭は真幸の右腕に体を当ててくる。
信頼している証なんだろうが、その彼女の豊満な胸までもが、真幸の腕に接触しまっていたのだ。
美蘭の胸は大きく、辺りが薄暗い事もあってか、変に意識してしまいそうになっていた。
「真幸の家に行くならさ、今日の夜一緒にやらない?」
美蘭からの突然の問いかけに、真幸は体をビクつかせていた。
「え、え⁉ な、何を?」
「今日の課題だけど」
「あ、ああ、そう言うことか」
「もしかして、変な事を考えたでしょ」
美蘭からさらに距離を詰められ、真幸の頬はみるみる内に赤くなっていく。
「そ、そんなことないし……」
真幸は強がって見せていたが、その表情は真っ赤に染まっているのだ。
そんな表情をしていると、彼女から、さらにからかわれてしまうのだった。
「でも、真幸となら、いいんだけどね」
――と、彼女は真幸の耳元で囁くように言う。
そんなセリフを言われたら、真幸は感情をはきだすことが出来ずに、少々気を失いそうになっていたのだ。
「だ、大丈夫? 真幸⁉」
体がよろめいた瞬間には、美蘭の声だけしか聞こえなくなっていた。
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