第2話 彼女の友達から疑われている?
「ねえ、真幸ってさ、今から時間ってある感じ? あるならさ、一緒に昼食にしない?」
「え?」
午前の授業終わりのこと。
「いいけど」
「じゃ、決まりね。真幸は弁当とかって持ってきてる感じ?」
「今から購買部で購入しようとしていたけど」
「そっか。だったら丁度いいし、今から購買部に行こ」
そんな中、周りにいるクラスメイトからの視線を感じたのだ。
なぜ、美蘭と関わっているのといった視線である。
「美蘭ー、今日は私とは食べない感じ?」
二人が教室から出ようとした時、扉のところまでやってきた子が一人。
「ごめんね、今日は真幸と過ごす予定で」
「えー、そうなの。なんか、残念。寂しいなぁ。私、美蘭のために弁当とかを作って来たんだけど」
そう言って、黒髪のロングヘアな彼女は弁当箱を見せてきた。
その彼女は
普段、美蘭は彼女と一緒に行動する事が多いのだが、今日は真幸と食事する事を選んでいたのだ。
「私も一緒でもいい? いいよね?」
「まあ、いいけど。真幸はどうする?」
美蘭から問われる。
その近くで、友人からジッと目を向けられていたのだ。
「お、俺も別にいいよ。一緒でも」
こんな状況で断ると、後々彼女から何をされそうで承諾するように頷いた。
「じゃ、そういうことで」
「でもさ、どうして、この人とお昼休みを過ごす事にしたの?」
「いいから。そういう話は」
「えー」
「じゃあ、別のところで話すから」
美蘭は、佳純にそう言って真幸を連れて教室の外に出るのだった。
「ねえ、ねえ、美蘭はどうして、この子と一緒にいるの? そろそろ話してよ」
購買部に立ち寄ってから、三人は校舎近くの中庭のベンチに座っている。
美蘭が中心に座っていて、右側には佳純。左側には真幸がいるのだ。
「付き合うことになっただけ」
「そうなの? 意外ね。美蘭が、この人を好きになるなんて」
友人は、真幸の事をまじまじと見つめている。
「でも、どうして? この前なんて他の人の告白とか断ってたじゃん」
「何となく。というか、この話はもういいでしょ。付き合うことになっただけ。それだけのことよ」
美蘭は本心を語る事に少々の恥ずかしさを感じているようで、強制的にその話を終了させようとしていた。
「えー、まあいいけどさ。美蘭が、この人の事を好きならいいんだけど……」
そんな中、佳純のジト目が真幸へと向けられている。
まだ納得している感じではなく、疑いのような眼差しなのだ。
もしや、信用されていない感じなのか?
確かに、どう考えても、陰キャみたいな奴が陽キャ女子と付き合う事になった時点で怪しまれることだろう。
「河合さん?」
「は、はい」
「もし、美蘭に変な事をしたら、どうなるかわかるかしら?」
佳純は笑顔を見せているが、どこか闇染みたオーラを背から放っている。
「は、はい……変な事はしないです」
「だったらいいんだけど」
佳純は腕組をして難しい顔を見せていた。
「というか、真幸は別に悪い人ではないからさ」
「でも、私、友達として心配で」
「そういう気持ちもわかるけど。仲良くしてあげてね。というか、真幸は他の人よりもいい感じの人だから」
「えー、そう?」
佳純から再び怪しむ視線を向けられたのだが、美蘭から頭を撫でられたことで次第に大人しくなっていたのだ。
「いいよ、美蘭がそんなに言うなら悪い人じゃないと思うし。仲良くするね、私」
佳純からは黒いオーラが消え去っていた。
彼女は美蘭の事が好きだからこそ、警戒しているところがあるのだろう。
「じゃ、河合さん、美蘭と付き合う覚悟があるんでしょ?」
佳純はベンチから立ち上がり、真幸の前までやってくる。
「は、はい」
「というか、美蘭の体目当てとかじゃないよね?」
「ち、違うよ」
真幸は全力で否定するが、美蘭のボディラインは制服の上からでもわかるほどに魅力的である。
否定するのも違うが、友人の前では紳士的に振舞おうと思い、全力で違うと返答したのだ。
「なら、よし! じゃ、私が作って来たお弁当を食べてもいいよ! 本当は美蘭と食べる用だったけどね」
佳純は弁当の箱を開け、中に引き詰められてあったチキンナゲットを箸で掴む。それから真幸の口元へと近づけてきた。
真幸の口内に、チキンの味が広がる。
程よい味付け具合に気分が良くなるのだ。
「それ、私の手作りなんだけど、美味しい?」
「うん、普通に美味しいよ」
「私の料理の腕が分かるなら信用できるかもね」
佳純も、真幸に対して心を開いてくれる。
最初はどうなる事かと思ったが、意外と優しい一面があるのだとわかったのだ。
「なら、私も真幸に食べさせてあげるから、口を開けて」
右隣にいる美蘭は、何も持っていない手でショートヘアな髪を弄り、もう片方の手で何かを隠していた。
「え? 何を食べさせるつもり?」
「それは食べてからのお楽しみだから。目を瞑って」
不安になりながらも美蘭の指示に従い、瞼を閉じ、口を開けると何かが入ってくる。
「これ……って」
瞼を開けた。
フルーツのような味がする。
「グミ?」
「正解!」
そう言って、美蘭も手にしている袋からグミを取り出して食べていた。
「美蘭って、グミが好きなの?」
「そうだよ。お腹が減った時はいつもグミばっかりって感じ」
「今日の昼食は?」
「それは別腹なの。購買部でサンドイッチを買ってきたし、それはそれで食べるつもりよ。真幸もパンを買ってきたんでしょ。一緒に食べよ」
美蘭から誘われ、共に食べる事になったのだ。
その光景を佳純はまじまじと見つめていたのだった。
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