露出度高めな陽キャ女子が、俺にだけ心を許してくれて色々見せてくれる⁉
譲羽唯月
第1話 露出度高めな陽キャ女子が、俺の事を誘っている⁉
「ねえ、真幸って、何か面白い話とかってないの?」
「なんだよ、急に」
「何となくだよ。何となく聞いてみただけ」
「無いならいいんだけど、なんていうか、新学期になってから離れ離れになってしまったよね」
「それはしょうがないだろ」
「今年も一緒だったら良かったんだけどね」
朝。通学路を歩いている幼馴染の
クラスが違うというのは、彼女の中ではかなりのショックだったのだろう。
「でも、家は近いし。そもそも、小学生の頃からの仲じゃんか。教室が離れ離れになったくらいで特に何も変化ないだろ」
「えー、あるよ。だって、小学一年生の頃からずっと一緒のクラスだったんだよ? しかも十年間も! これは誰かの仕業?」
「そんなわけないから」
真幸の隣を歩いている彩芽は妙に真顔で考え込んでいたのだが、少しすると、そんな事はないよねと話していた。
「でも、高校卒業までは一緒のクラスが良かったんだけどなぁ」
「なんで?」
「だって、真幸も寂しいでしょ? 体育の時間とか、家庭科の時間とか。ちゃんとやれてる?」
「それは出来てるよ……」
確かに考えてみれば、今まで幼馴染と一緒のクラスだったからこそ、特に何の心配もなく過ごせていたのかもしれない。
今のクラスには仲の良い知人がいるわけでもなく、それに比較的陽キャの多いクラスなため、自分からはなかなか話しかけづらくもあった。
彩芽がいた方が良かったのかもしれないと一瞬脳裏をよぎるが、新学期になって一か月も経った今、クヨクヨと悩んでいても真幸が抱えている問題が解決するわけではないのだ。
幼馴染が教室にいない、この高校二年生の生活を一日でも早く慣れていくしかないだろう。
――と、真幸は彼女と一緒に学校に繋がっている通学路を歩きながら、改めて思うのだった。
学校に登校した真幸は席に座っていた。
普段から窓際の席に座っており、そこからは校門を通り抜け、校舎の方へと向かってくる人らの姿が見える。
教室内。周りには人がいる。
いつもと同じといった顔ぶれ。
進級してから早一か月が経過したものの、クラスメイトとの距離感を縮められずにいた。
教室内には陽キャらが多く、一人で席に座っている真幸の耳には、陽キャらの話し声が響いていたのだ。
陽キャらの、その話し声が気になってしょうがなかったのである。
話の内容としては、好きでもない人に対して告白できるかチャレンジについてだった。
あまり耳にしたくない内容であり、耳を塞ぎたくなってくる。
まだ朝のHRまで時間あるし、少し教室の外に行くか……。
この空気感に堪えられず、真幸が席から立ち上がろうとした時、目の前に誰かが佇む。
え?
誰かと思い、顔を上げてみるとクラスの女子――
彼女は露出度の高めな制服の着こなし方をしており、胸元が強調されている。
高校生にしては胸が大きく、なおさら真幸の目線はそこばかりに向かってしまうのだ。
彼女はその場から、真幸のことを見ている。
美蘭は陽キャ寄りの女子であり、スクールカーストの中でも上の方だ。
そんな彼女から何を言われるのか不安になり、真幸も美蘭の方を見返した。
「えっと……なんでしょうか?」
「あんたさ、ちょっと今から時間ある?」
急に問われ、返答に戸惑う。
「あるならさ、ちょっと教室の外に出ない?」
真幸が返答しようとする前に、美蘭から強引に手首を掴まれ、教室の外へと出ることになったのだ。
廊下に出た真幸は、美蘭に連れられ、校舎の屋上へ向かう。
朝の今、この屋上には誰もおらず、二人きりの状況。
誰かにこの現状を見られる心配もないわけだが、今から何を言われるのか変に緊張しつつあった。
もしかすると、教室内で陽キャらの間で話題になっていた告白チャレンジについての話かもしれないと思い、少し不安になる。
「それで……話とは?」
どうせ、嫌な話を聞くくらいならば、自分から聞きにいった方がいい。
それに、この緊迫した環境から離脱したいという思いもあり、手短に済ませたかったのである。
「ねえ、顔上げな」
「は、はい」
「あんたさ、付き合っている人っていんの?」
「え……い、いないですけど」
「そう。だったらさ、丁度いいし、私と付き合ってみない?」
美蘭からあっさりとした提案をされる。
しかも、付き合うかどうかの重要な内容であり、真幸は目を丸くした。
「え、なんで、俺と?」
「だって、付き合っている人がいないんでしょ?」
「そうだけど。俺でいいの?」
「別に構わないけど?」
「でも、何かのゲームで告白とか?」
「は? なんのこと? そんな事で告白するわけないじゃない」
「え、さっき教室内で、そういう話をしている人がいて」
「ああ、あれの話と私は関係ないわ」
「そ、そうなの?」
「そうそう。だから、私は普通に誘っただけ。特に何も疚しい事もないわ。それでどうする? 彼女もいないんでしょ?」
「そ、そうだね……」
美蘭は陽キャな性格をした女の子で、見た目も派手である。
真幸はというと普通な容姿をしていて、完璧な陰キャというわけでもないが、どちらかといえば、陰キャ寄りだと思う。
美蘭から直接的に告白されたものの、一緒に関わっていけるか不安な想いもあり、さっきから悩んでばかりいたのだ。
しかし、異性から告白されたのは、人生で今日が初めての経験であり、ここで断るのもなんか違うとも思えた。
「ま、まあ、一応」
「え? なに?」
「つ、付き合うよ」
真幸は気恥ずかしかったが、ハッキリと言い直した。
真幸はいわゆる高校デビューを失敗した類の人なのだ。
陽キャな彼女からの誘い。
美蘭と一緒に関われば、少しでも悩みが解消そうな気がした。
「わかったわ。じゃ、決まりね。これから仲良くしようね。というか、あんたの事はなんて言った方がいい? 普通に真幸とか?」
「え……と、それは好きに呼んでもいいよ」
「だったら、ダーリンとか」
「そ、それは無理」
真幸は全力で拒否したのだ。
「なんで?」
「急に親しくも無いのに」
「でもさ、これから親しくなるんだよ? 良いじゃん」
「まだ、心の準備が必要だから。その、下の名前で」
「しょうがないね、じゃ、真幸ね。私のことは美蘭でいいから」
美蘭から笑顔で言われ、初めてできた彼女という事も相まって、頬を紅潮させてしまっていた。
今いる教室でまともに会話した子であり、嬉しくもあり、緊張する感情がなおさら加速していく。
二人は朝のHRが始まる前に教室へと戻って行くのだった。
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