墜ちたる最強天使は地の底から舞い戻る
永礼 経
第1話 『即断』
「お、お助け下さい!!
村長が地に伏して懇願している。
「――村長、ありがとうございます。ですが、罪は罪。僕は自分の行いを恥じてはいませんが、罪には罰が与えられなければなりません」
少年は毅然とした態度でまっすぐに立っている。
少年の名は、ハンスと言った。
ハンス。どこにでもある珍しくもない名だ。
その少年を遠巻きで見ている少年たちの一団がある。さっきまで、ハンスの妹のフランを取り囲み、ふざけていた少年たちだ。
ハンスはその様子を見つけて、その一団の中に入り、少年たちを追い払おうと手を振った。
その手が少年の一人にぶつかり、その少年の顔が赤く腫れたのだ。
『その少年の行いの理由は問うていない。結果としてこの少年は一人の少年を傷つけたのだ』
「
その姿は、まるで、黄金色に輝く彫像のようでもあり、また、神々しく光る人のようでもあった。
その声は男とも女とも違う明らかに異質な音で響き、感情の抑揚もなく、ただ、事実だけを告げる。
この世界の
一つ、人を傷つけてはならない。
二つ、人を
三つ、人から
これに反したものは全て『断罪』される。それを執行するものこそ、「
「ですが――!」
なおも村長が地に頭をこすりつけて懇願する。
「――この少年も故意に傷つけようとしたものでないことは明白です。また、そうされた少年も、自分の行いを恥じ、罪に問う意識はございません! どうか――ご
『慈悲、だと――?』
「はい! 神は全知全能なる存在として我ら人間をお創りなさいました。その
『――正義、だと、お前は今言ったのか?』
「はい、少年の行動は、真に大切なものを守るためやむなく取った行動です。その心根はまさしく正義の心だと思われます! どうか! どうか、ご慈悲――」
その瞬間だった。
村長の首が地面に転がった。
首は胴から離れ、その切り口から血飛沫が噴き出し、周囲に血の雨を降らせた。
「そ、村長さまぁ!」
「きゃあぁぁ!!」
周囲を取り囲んでいた村民たちが口々に叫び声をあげる。
『この
その中で、ただ一人ハンスだけが未だに臆せず、毅然と
「――
ハンスはそう言うと、その場に膝をつき、首を傾けた。
『――ならば即刻、処断する。
ひらりと
ギィィイイイン――――!!
耳を
そしてそれを押し留めているものは、金色に輝く刀身であった。
「まったく、融通が利かない野郎だ――。可哀そうに
『この金色の片刃剣――、まさかお前は――!!』
「ああ、そのまさか、だ――。お前程度の下等天使が『即断』するなんて、どこまで
『だ、堕天使ギルナレク・ウェルダー!!
ギイン――――!!
御遣いの言葉が終わる前にギルナレクの剣が
そしてほどなく、御遣の身体と吹き飛んだ首が煙のように消滅する――。
「『
ギルナレクはそう言いながら金色の片刃剣を腰の鞘に納めた。
墜ちたる最強天使は地の底から舞い戻る 永礼 経 @kyonagare
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