第24話、危ない!
4
「城下町でまたいざこざが起こっているだと?」
「はい。今回は負傷者も多数出ているようで教会からも支援が来ています。いかがなされますか?」
警備隊の一人がゼリゼの元へ知らせがきたのは、今から夜食につこうかという少し遅い時間帯だった。
夜間に起きた事は次の日に対応しているのだが、今回は内容が内容だけに行かざるを得ない。
ゼリゼはハァーと大きくため息をついた。
「またアイツらの企みじゃないだろうな?」
面倒臭そうにゼリゼが舌打ちする。
もしそうならゼリゼが居なくなったのを見計らってまた玲喜に絡みに来るだろう。そう思うと玲喜は苦笑せざるを得ない。ゼリゼは腕の中に玲喜を囲った。
「それならオレも連れて行ってくれないか。怪我人いるんだろ? オレはゼリゼと一緒に居たい」
治癒能力を持つ玲喜が居ればゼリゼとしても助かる。
しかし教会の連中も来ているとなれば、逆に玲喜を危うい立場に追いやる事になってしまう可能性が高い。ゼリゼは究極の選択を強いられているような気分だった。
「なら、易者のように目元だけ出るように変装してみては如何でしょう? ヴェールが取れた時用に、魔法で髪型や色を変えておけば二重変装みたいにも出来ますし、アーミナにも同じ格好をさせれば目眩しにもいいかと。それに玲喜なら詠唱破棄して回復術をかけられるようなので、私やゼリゼ様で玲喜の周りを囲って見えないようにして、治癒魔法を使うという手もありますよ。もし玲喜だけを此処に残されて行くとなれば、マギル様とジリル様は確実に現れると思いますし」
額に左手を当てて考えていたゼリゼだったが、ラルの意見に賛同するようにやがて頷いた。
魔法で髪色や髪型を変えて服も易者風になるように着替えた玲喜とアーミナ、ラルとゼリゼは兵士たちを従えて城下町を訪れている。
「もう~何で僕らが駆り出されなきゃいけないの~? 超~面倒くさいんだけど~? で、何であいつらは暴れてるわけ?」
「ジリルさっさと終わらせて帰ろうぜ」
不満たらたらにしている見知った顔を見て、玲喜たちは唖然としてしまった。
黒幕だと思っていた二人が先に来ていて、文句を言いながら活動しているのだから至極当然な反応だったと言える。
「アイツらじゃなかったのか……」
肩透かしをくらい足を止めてしまったが、その二人の先で殴り合いの喧嘩が起きているのが分かり目を向けた。
「なんか、様子がおかしくないか?」
玲喜がそう言葉にする。
喧騒毎が起きているというのに、全体的に覇気がない。
夜だからなのか、買い物に来た時に見たような雰囲気ではなくて何処か殺伐としていた。
個人の意思は感じられず全員操られているように瞳に生気も感じられない。否、違う。人ではない。人の姿をしたナニカが民衆の中に多数混ざっているのだ。
それらの姿が揺らめき、歪な形に変わる。
風船か何かに人の負の感情だけを入れて膨らませた状態になっていた。
少しの力を加えれば、今にも爆発してしまいそうだ。そこへマギルとジリルが近づいていく。
——アレに触れてはダメだ。
ザワリと総毛立つ。
直感的にそう思った時、玲喜は叫んでいた。
「マギルっ、ジリル、駄目だっソレに近付くな!」
「玲喜?」
「קירי אליסון」
玲喜はバレるのを顧みずに呪文を口にする。
白い閃光が玲喜を中心に大きくなり始め、全てを包み込んで禍々しい気配を押し流していく。
光が落ち着いてきた時には人型のナニカたちは、空気の抜けた風船のようにひしゃげて地に落ちていた。
「何だ今のは?」
「誰がこんな高難易度の魔法を使った⁉︎」
さっきまでとは違った騒めきが場を支配していく。
ゼリゼは玲喜を背に庇い、気が付かれないように手で口元を隠すと、ラルとアーミナに言った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます