アサシンキラー 〜標的は同業者!?〜

阿祇那由汰

第1話

「あーだりぃ...」


殺し屋の家系に生まれ、小さい頃から英才教育を受けてきたまさにエキスパート。裏社会で知らない者はいないと言われる程の実力の持ち主であり、現当主。それがこの男、ノアである。


「今日も仕事なしか...うまいもん食いてぇけど金ねぇな...」


数年前元首が変わったこの国では殺しは一発で死刑、暴行などの未遂であれど40年以上の懲役にプラスして拷問が行われる程の大罪である。そんな時代の流れによってこの業界は少しずつ淘汰されつつあった。それに伴い業界を離れる者が後を絶たず、現在では彼のように仕事を続けている者は極わずかである。また国の変化により依頼者も年々減少し、仕事がない状態が続いていた。


「このままじゃ食いっぱぐれるだけだし、万が一捕まったらたまったもんじゃねぇ。別の仕事探すかなぁ」


「あの...ノアさんという方のお家はここで合っていますでしょうか?」


「あ?鍵開いてるからって勝手に入んなよ、てか誰?」


「す、すみませんっ!!インターホンとかも無かったものでつい...あ、えっとその私、国の者でして」


そう言いながら彼女は名刺を差し出す。態度は怪しいが確かに国の機関に所属しているようだ。よく見れば小綺麗なスーツに小さな国のバッジがついている。国にとってノアは立派な検挙対象。今まで様々な依頼をこなし証拠も残さず逃げ回ってきたがついに終焉の時が来てしまった。


「嘘だろ...くそっ!」


「あ!ちょっと逃げないで!!私は貴方を捕まえに来たんじゃないんです!貴方に...力を貸して欲しくて!」


「力を貸して欲しい...?」


彼女は持っていた鞄から書類を1枚取り出し、彼に差し出した。


「国から貴方へ依頼が来ています。どうか力を貸してください。」


「国から!?」


殺しを含めた様々な犯罪の取り締まりや処分をここ数年で一気に厳しくしたのは国である。そんな国が殺しを生業とするノアに依頼など何かの間違いじゃないだろうか必死に脳をフル回転させる。


「ノアさん、一緒に来て頂けませんか?」


「いやいやいや!嘘ついて俺を捕まえる気なんだろ?なぁ、そうだろ!?」


「落ち着いてください。そんなつもりは一切ありません。」


真面目な顔で必死に説得する彼女の目は真っ直ぐで澄んでいる。今まで沢山人の顔や表情を見てきたノアは顔を見ただけでその人が嘘をついているか否か分かるようになってしまった。彼女は今嘘をついていない。それが分かると1歩前へ出てこう答えた。


「分かった、まだ何が何だか分からんが。その依頼、引き受けよう。」


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