細長い月の夜に 第6話

「儚い恋じゃな…」


「うん、今までの人生で唯一の恋。僕はさ、今でもこの時のことを後悔してるよ」


「わかる気がする。わしも同じようなことがあったでな」


「ふーん、ワタリの恋か。聞いてみたいような聞いてみたくないような」


「恋…ではないけどなで、結局、そのことはそれで終わりか」


「うん、それで終わり。それでさ、帰り道に空を見上げたんだ」


「うむ」


「そしたらさ、今夜みたいに細長い月が僕を見下ろしてたんだよ。だからさ、今夜みたいな夜はこの話を思い出しちゃうんだ」


「彰…」


僕は空を見上げる。今夜も月は僕を見下ろしていた。

しかし、以前とは違い今夜は月が優しく見守ってくれている_そんな気がした。


「そろそろ行く」

ワタリはそういうと闇の中へ消えていった。


僕はいつまでも月を眺めていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ワタリと僕 @ookamitokarasu

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ