第18話 温泉でバレる!? 女装生活の最大ピンチ!
夜が更け、温泉旅行1日目は無事に終わったかのように見えたが、智也の心は全く落ち着かなかった。温泉に入ることを避けることには成功したが、玲奈の鋭い視線がずっと気になっていた。彼女が何か疑っていることは間違いない。智也はこれ以上ごまかすのが難しいと感じ、さらにプレッシャーを感じていた。
翌朝、温泉宿の広い部屋に朝日が差し込み、静かな空気が部屋を包んでいた。智也は早めに目を覚まし、他のメンバーたちがまだ寝静まっている中で布団の中で体を起こした。窓の外からは鳥のさえずりが聞こえ、木々の間を抜ける風の音が穏やかだった。
智也は寝相が乱れているメンバーたちを見渡しながら、自分も静かに息をついた。
「なんとか、昨日は切り抜けたけど…今日はどうなるんだろう。」
彼は再び温泉に行くことになるかもしれないという不安に心が支配されていた。
その後、メンバーたちは次々と目を覚まし、朝食の準備を始めた。温泉宿の朝食は伝統的な和食で、テーブルには焼き魚や味噌汁、ふっくらと炊かれたご飯が並べられていた。料理からは温かい香りが漂い、智也の五感に心地よい刺激を与えていた。
「やっぱり、温泉宿の朝食って最高だよね。」
桜が嬉しそうにご飯を頬張りながら話す。玲奈や霞も無言で食事を楽しんでいたが、その中で智也の視線はどうしても玲奈に向いてしまう。玲奈はいつも通り冷静で、特に表情に変化はなかったが、その観察眼は鋭く、智也にとっては気が抜けない存在だった。
「昨日、何とかごまかせたけど…玲奈は本当に気づいてないのかな…?」
智也は心の中でそう自問しながら、どうにか気づかれないように過ごすことを考え続けていた。
朝食を終えた後、メンバーたちは部屋で一息ついていたが、桜が再び明るい声で提案をしてきた。
「ねぇ、朝風呂行かない? 朝の温泉って気持ちいいらしいよ!」
その言葉に、智也の心臓は跳ね上がった。
「また温泉か…!」
昨日の夜は何とかトイレの言い訳で乗り切ったが、今日も同じ手を使うことはできない。智也は焦りを隠しながらも、どうにかして再び温泉を避ける方法を考えた。
「彩香、どうする? 体は大丈夫?」
玲奈が冷静に問いかけてきた。その視線は依然として鋭く、智也はその場で何を言うべきか一瞬迷った。だが、すぐにまた言い訳を作り出すのも怪しまれる可能性がある。
「う、うん… 少しだけ休んでから入ろうかな…」
智也はそう答え、何とか時間を稼ぐ作戦に出た。しかし、桜や霞はすでに浴衣に着替え、温泉に向かう準備をしていた。玲奈もその後に続き、彼女たちが再び温泉に向かうことが決定的になった。
智也は、温泉に行くことをどうにか避けたいという気持ちと、メンバーたちに怪しまれる不安の間で揺れていた。特に、玲奈の存在が大きなプレッシャーとなっていた。彼女は何かに気づいているのか、冷静な観察力で智也の動向をじっと見ているように思えた。
「玲奈… もしかして、何かに気づいているのか…?」
智也は、彼女の鋭い視線を感じながら、冷や汗をかいていた。昨晩の言い訳が通じたのは幸運だったが、今日も同じようにごまかせるとは限らない。
メンバーたちが温泉に向かう中、温泉を避け続けるのも怪しいとのでその後に続かざるを得なかった。温泉宿の廊下は昨晩と同じく静かで、畳の足音が柔らかく響く。硫黄の匂いが鼻をつき、温泉に近づくにつれてその蒸気が肌にまとわりついてくるのが感じられた。
「このままじゃ本当にまずい…何とかしないと。」
智也は再び、どうにかして温泉に入ることを避ける作戦を考えた。またトイレに行くことも考えたが、同じ手を使うのは明らかに不自然だ。
温泉に向かう途中、玲奈が不意に口を開いた。
「彩香、昨日は夜も温泉入らなかったよね。何かあったの?」
その問いかけに、智也の心臓は一瞬止まったような気がした。玲奈の声はいつも通り冷静だが、どこか深く追及しているような気配があった。
「え、えっと… 昨日はちょっと体調が悪くて…でも、今は大丈夫だよ。」
智也は何とか言い訳を返したが、玲奈の表情には変化がない。
「そう…でも、無理しないでね。」
玲奈はそれ以上は何も言わず、再び温泉に向かって歩き出した。だが、智也はその一瞬で、彼女が何かを探ろうとしていることを感じ取った。
温泉の入り口に再び到着したとき、智也の緊張はピークに達していた。メンバーたちがそれぞれ浴衣を脱ぎ、温泉に入ろうとしている中、智也は再び時間を稼ぐために行動を起こさなければならなかった。
「どうしよう…もう後がない…」
心の中で焦りが募る中、智也は再びトイレに逃げる作戦を考えたが、それは昨日使ったばかりの言い訳であり、再び使うのは明らかに怪しまれるだろう。智也は必死に他の方法を探し続けた。
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