第12話 展示会当日と智也の不安

ついに展示会当日がやってきた。


サークルメンバー全員がそれぞれの作品を展示する準備を整え、会場にはたくさんの来場者が訪れていた。展示会は、智也にとっても美術サークルにとっても、サークルのランクを左右する大きなイベントであり、全員が緊張と期待を胸に抱えていた。


展示会場は、大学内の広いギャラリースペースが使われており、来場者は学生や教授だけでなく、外部からも多くのアートファンが訪れていた。大きな窓から柔らかい日差しが差し込み、作品の色彩がより一層映える環境が整えられていた。


「すごい人だね…」


智也は、周囲の人々がそれぞれの作品に興味を示し、熱心に見入っている様子を見て圧倒されていた。サークルメンバーの作品がずらりと並び、玲奈や桜、霞もそれぞれの作品の前で来場者と話していた。


智也も自分の作品を展示し、少し緊張しながらその場に立っていた。彼の作品は、自分なりに工夫して描いたものだが、まだまだ他のメンバーのような技術や自信は持てていない。


「俺の作品、どう評価されるんだろう…」


不安が胸をよぎるが、ここまで一生懸命に取り組んできた自分を信じるしかなかった。


展示会が進むにつれ、来場者たちは次々とサークルの作品に足を止めていった。特に、玲奈の作品は多くの人々の注目を集めていた。彼女の風景画は繊細でありながら力強く、その技術と表現力に感嘆の声があがっていた。


「玲奈の作品、すごいな…」


智也は彼女の実力を改めて感じつつも、周囲の反応に少しプレッシャーを感じていた。玲奈の作品に集まる関心が高まる中で、自分の作品がどれだけ評価されるのか、不安が募る。


そんな智也の様子を察したのか、霞が彼のそばに静かに近づいてきた。彼女も自分の作品を展示していたが、智也にとって霞の存在はこのサークルでの支えとなっていた。


「彩香ちゃん、大丈夫だよ。私たちはみんな、一緒に頑張ってきたんだから。彩香ちゃんの作品も素敵だよ。」


霞は優しい笑顔でそう言ってくれた。その言葉に、智也は少しだけ心が軽くなった。霞の言葉には、いつも智也を安心させる力がある。


「ありがとう、霞…」


智也は感謝の気持ちを込めて、霞に微笑み返した。彼女が隣にいてくれるだけで、少しだけ自信を取り戻せた気がする。


展示会が終盤に差し掛かると、ついに審査員によるサークルの評価が発表される時間がやってきた。サークルのメンバー全員が緊張の面持ちで集まり、結果を待ち構えていた。


「次に、私たちのサークルのランクがどうなるのか…」


智也は心の中で強く祈りながら、審査結果の発表を待った。会場内は静まり返り、審査員が一つ一つサークルの評価を読み上げていく。智也たちのサークルも、ついにその瞬間が訪れた。


「美術サークルの評価は…」


その言葉が響くと、全員が息をのんだ。


そして――



「美術サークル、ランクは…Dランクに昇格!」



その言葉が響いた瞬間、サークルメンバーたちは喜びの声を上げた。Dランクという結果は、彼らが目指していた目標よりも少し低いかもしれないが、それでも今までEEEランクだったことを考えると大きな進歩だ。


「やった…!これでサークルが続けられる!」


桜が歓声を上げ、メンバーたちと抱き合って喜びを分かち合っていた。智也もまた、心の中でホッとし、これまでの努力が報われたことを感じた。


展示会が終わり、サークルのランクが上がったことで、智也は自分自身の成長を感じていた。まだまだ美術の技術は未熟だが、それでも仲間と共に一つの目標に向かって頑張ることができた。この経験が、彼にとって大きな財産になった。


「これからも、みんなと一緒に頑張っていこう。」


智也はそう自分に言い聞かせ、次なる挑戦に向けて心を新たにした。サークルのランクは上がり、これからさらに高みを目指して進んでいく。

いつまでこの生活が続くのか智也自身にもわからなかったが、それまでの間はサークルの仲間たちと共に輝く未来を描いていこうと誓うのであった。

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