第7話 サークルプロジェクトへの挑戦(2)
サークル活動の流れが少しずつ定着していく中、智也は「彩香」としての生活にも慣れ始めていた。
彼は毎日、少しずつ絵を描くことに集中し、サークルのメンバーとも自然に会話を交わすようになっていた。初めての不安は徐々に薄れ、智也はこの環境に順応しつつあった。
その日、部室での活動が終わった後、桜が智也に話しかけてきた。彼女はいつものように明るい笑顔を浮かべ、智也に何か提案をしているようだった。
「ねえ、彩香!今度みんなで一緒にランチに行かない?みんなで外で食べたら、きっと楽しいよ!」
桜はいつも前向きで、何事も楽しもうとする性格だ。智也は彼女の明るさに助けられている部分も多く、誘いを断る理由もなかった。
「いいね。ランチ、楽しそう。」
智也は笑顔を返しながら応じた。桜はそれを聞くと、すぐに他のメンバーにも声をかけ始めた。
「玲奈!霞!今度ランチ行こうよ!彩香も来るって!」
桜の呼びかけに、霞はいつものように穏やかな笑みを浮かべながら頷き、玲奈も軽く微笑んで同意した。サークルのメンバー同士の絆が少しずつ深まっていくのを感じながら、智也は自分がこの場で少しずつ居場所を見つけていることに気がついた。
ランチの約束が決まった後、サークル内では新たな話題が浮上していた。それは、サークルのランクを上げるために、全員で取り組むべき新たなプロジェクトについてだった。
「ねぇ、みんなでサークルのランクを上げるために、次の展示会に全力を尽くそうよ!」
桜の提案に、メンバー全員が集まって話し合いを始めた。今のサークルは最下位のEEEランクに位置しており、何らかの成果を出さない限り、廃部の危機に立たされている状態だった。
「次の展示会で良い評価を得れば、ランクを上げることができるかもしれない。だから、全員で力を合わせて最高の作品を作ろう!」
玲奈が冷静な口調で説明する。その言葉に、メンバーたちは一致団結して頷いた。サークル全体がこのプロジェクトに真剣に取り組むことを決意し、それぞれが自分の役割を果たす覚悟を固めた。
智也もまた、サークルの一員としてこのプロジェクトに参加することになったが、内心では不安が募っていた。
美術の経験が浅く、他のメンバーたちほど自信があるわけではない。それでも、妹の彩香としてサークルに参加している以上、何とかして結果を出さなければならない。
「俺にできることって何だろう…」
智也は心の中で自問自答した。今の自分には何ができるのか。彩香として過ごす日々が続く中で、自分がやるべきことが少しずつ見えてくるような気がしたが、まだそれははっきりとは形になっていなかった。
しかし、サークルのランクを上げるために何か役に立つ方法を見つけなければならない。智也はその思いを胸に抱きながら、次の展示会に向けて全力を尽くす決意をした。
その夜、智也は家でスケッチブックを広げながら、次の展示会に向けてどんな作品を作れば良いのかを考えていた。美術の知識や経験が乏しい彼にとって、このプロジェクトは非常に大きな挑戦だ。
「何を描けば良いんだろう…」
彼はペンを手に取り、キャンバスに描くイメージを膨らませようとした。しかし、まだ形が浮かんでこない。それでも、少しずつ自分の中で何かが動き出しているのを感じた。
サークルのランク向上に向けて、智也は全力で取り組むことを決めた。そして、これから自分が何を描き、どんな形でこのプロジェクトに貢献できるのかを模索していくのだった。
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