第14話

「皆さん、おはようございます。副住職の翡翠です。本日は朝早くから当寺院に御足労頂き、誠にありがとうございます。」



そう翡翠様がにこやかに微笑むと、声にこそ出してはいないけれど、みんな心の中で悲鳴をあげているのが見て取れた。


わかる、わかるわー。

あんな笑顔を自分だけに向けられたなら、もう何もいらないって思えるよね、本当。


いつもは前列の席に座って聞くので、一、二度くらいは翡翠様と目が合う。


でも今日は、こんな見えるか見えないかのところだし、翡翠様の法話が聞けるだけで良しとしなければ。




ーーなんて、そう思った瞬間、



翡翠様と目が合った。




それだけ、たったそれだけの事なのに、嬉し過ぎてドクドクと心拍数が一気に上がる。



本当、思春期真っ盛りな中学生か、って自分で自分にツッコミたくなるような状態だけど、心は正直で頬はゆるゆると緩んでいく。

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