第8話

翡翠様と知り合ってから、私が彼を好きになるまではあっという間で。


気が付いたら夢中になっていたけれど、『お坊様』という方々は、勿論結婚なんて出来ないものなのだと思い込んでいた。



だから人並みに結婚願望がある私は、翡翠様は憧れで終わるしか無い人なのだと思っていたのだ。



それが。



小耳に挟んだ情報によれば、みんながみんな、結婚出来ない訳では無いらしい、と。




「翡翠様翡翠様翡翠様っ!!」


「…どうされたのです?」


「お坊さんって結婚出来るんですか!?」


「はい。宗派にもよりますが。」


「え!じゃあ私と結婚して下さいっ!!」


「出来ません。」


「なんで!?」



間髪入れずに否定した翡翠様は、穏やかにニコリと微笑む。




「タイプではないからです。」




まさかの人生初告白は、あっけなくアッサリと玉砕してしまった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る