雨の日は君は笑う

鳳仙

雨の日に異常者は笑う

 「お先に失礼します!」

 今日は疲れていたがこの言葉だけは大きな声ででた。

 するとお疲れ様ですとバイトや副店長、上司の先輩が返してくれた。

 

 今日は店長もあがっていいと言ってもらえたので、タイムカードを打刻して店をあとにする。

 

 藤宮市のバイパス通りにあるレストラン。

 そこが僕の職場だ。

 

 僕はそこから歩いて家へと帰宅する。

 自動車免許を持っていないので仕方ない。

 

 22歳にもなってなさけない。

 本当は大学生の時にとる予定だった。

 でもとるのがなんだか嫌になって今に至る。

 要するに僕はどうしようもない男なのだ。

 今だに自動車学校に通う事がめんどくさくて出来ていない。


 ――藤宮市ふじみやし――

 田舎ではあるが、田舎すぎない僕の地元。

 湧き水や滝、神社や有名な山があることで、多くの観光客が訪れている。

 車の免許もない僕にとっては、都会に行く手段にはローカル線の電車に乗って隣の藤市ふじしの藤駅で電車の乗り換えをするしかない。

 めんどくさい土地だ。


 仕事が終わりもう道は暗くなっていた。

 よりみちができる場所もないので僕は歩く。

 職場のレストランから家まで歩いて30分かかる。

 この30分で僕は気力が抜けていく。

 結局家に帰ったら疲れてそのまま眠ってしまった。


 次の日

 ――8時39分――

 母が作ってくれた弁当と仕事の制服をリュックサックに入れて僕は立ち上がる。

「行ってきます。」

 そういって部屋から出る。

 廊下を歩いて、キッチンをとおる。

 祖母と祖父がリビングで朝ごはんを食べていた。

 祖父母が見ているテレビや新聞、スマホからは政治のニュース、スポーツのトレンド、不審な死体、いろんな情報が溢れていた。

 僕はそのどれもに興味がなかった。

 いやそんな事を気にするほどの余裕がなかった。

 家を出る。

 雨が降りそうだった。


――9時17分――

 コンビニで、サラダチキンと飲み物を買って職場であるレストランに着いた。

 扉を開ける。

「おはようございます。」

 大きな声で発声する。

 すると奥から

「はいおはよう。今日は鍋と食材を……」

 店長がそう言いながら来る。

 店長の話を聞き終えたあと、パートの人やバイトの人にもおはようございますと一通り挨拶をして事務所に入る。

 そして制服に着替えて、手を洗う。

 外の水道のメーターや電気、ガスの光熱費を確認してタイムカードを打刻する。

 出勤時間は、9時30分からだったがまだ28分だった。

 こうしてまた1日が始まった。 


――14時6分――

「休憩いただきます。」

 そう言ってレストランの厨房の裏にある事務所に入る。

 そこで弁当とコンビニで買ったサラダチキンを食べる。

 そして店のノートパソコンに朝確認した光熱費の数値を記入していく。

 これが仕事があるときの僕の日課だった。


 ふとパソコンの画面に表示されたニュースが目に入る。

 ――謎の死体今週で3件目、藤宮市――

 物騒なニュースだ。怖い。

 そう思いながら、パソコンを閉じる。

 残りの休憩時間はスマホを見て過ごす。


 面白い噂話があった。

 何でも藤宮市に魔女がいるらしい。

 藤宮市のトレンドにあがっていた。

 なんでも雨の日に魔女のコスプレした女の人がでるらしい。

 それが謎の死体の事件といい話題の藤宮市ということで、魔女の呪いと話題になっていた。

「休憩いただきます。」

 後ろから声がした。

 副店長が事務所に入っていた。

 僕はスマホをしまい厨房に戻った。


「休憩ありがとうございました。」

 そう言いながら仕事に戻る。


 ――19時08分――

「お先に失礼します。」

 タイムカードを打刻する。

 事務所から出ると雨が降っていた。

 僕は傘を持っていなかった。


 そして歩き始める。

 僕は笑っていた。

  

 


 

 

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