第13話 大日本帝国憲法を強くしよう!①

憲法は人間でいえば背骨か腰に相当するような国家にとって重要なものだ。

現在の日本には大日本帝国憲法があるのだがこれが成立した背景には不平等条約の影響が有る。

というのもヨーロッパ列強が日本と通商条約を結んだ際に日本に不利な不平等条約となってしまった原因だからだ。


つまり、列強各国から見れば「日本なんて憲法すら持たない非文明国なんだから信用するに値しない。よって不平等条約で十分だ」と思われたのだ。

これを改めてもらえるよう交渉する為に出来たのが鹿鳴館(ろくめいかん)、、、

もとい大日本帝国憲法なのだが、作った当人の伊藤博文が途中で失敗したと思ったのが第55条だ。


全くあの語学馬鹿が…


この第55条の内容は「国務各大臣は天皇を補弼ほひつし、その責任を負う」と書かれていて、つまり総理を含む国務大臣全員が天皇の下で横並びであると解釈できる文面になっているのだ。

それを伊藤博文は自分が総理大臣になってから気付いたという、なんともお粗末な話だ。


これのどこがマズイかというと縦割りだからだ。

本来なら天皇の下に総理大臣がいて、その下に各国務大臣がいる形式にすべきところ、そうは解釈されない為に、総理大臣の権限が限定され、内閣の運営に支障を来たす。

さらに時代が進むと横の連絡がスムーズに行かないばかりか、軍の報告が総理大臣に届かないというような結果に繋がった。


また総理大臣の権限が弱いから閣内不一致を原因とする内閣の交替が頻繁に起こった。さらに後年、陸軍大臣と海軍大臣は現役の大将か中将が充てられることが規定された。

これにより陸軍と海軍は、自分たちが支持しない内閣からそれぞれの大臣を辞任させ、後任を出す事を拒否することによって、軍の意向を内閣に押しつけることができるようになってしまった。


最終結果が軍部の暴走だ。


また史実で陸軍と海軍の仲が悪かったのは有名だが、これの要因も突き詰めればこいつが根にある。仲が悪いだけならまだしも、方針の違いに発展した。

陸軍はソ連、次いで中国を仮想敵とし、海軍は予算欲しさにアメリカを仮想敵に設定した。

実際の戦争もこの通りバラバラに戦った。これでは勝てる戦争も勝てない。

よくこんな状態で日本は太平洋戦争を戦えたものだと感心する。

太平洋戦争は無謀な戦争だったとよく言われる。

圧倒的な物量で押してくる相手に竹槍で戦うなんて馬鹿のする事だと。

俺も子供の頃はそう思わされていた。

しかし詳しく調べてみるとそんな事はない。

結果が悲惨だったから逆算して考えているだけだ。事実、開戦を知ると国民は狂喜乱舞したではないか。


だが結局のところ陸軍は国民党と戦争中だったし、日ソ中立条約を結んだソ連も、満州国境に大軍を貼り付けたままだった。

海軍もアメリカとオランダとイギリスとオーストラリアと戦っている。

そんな悪条件でも最初は勝ちそうになった。

それだけ陸海軍とも前線の将兵がとんでもなく優秀で強かったという事だが、兵や下士官がいくら優秀でも国家の方針も戦争目的も統一出来ていないのでは勝てないのだ。


残念だがこの点で令和の日本企業も同じだ。

内閣が軍部を文民統制(シビリアンコントロール)出来ていて、国家方針と戦争目的を明確にしておれば勝てたのだ。

ビスマルクのように。

では“天皇は陸海軍の大元帥なのだから天皇が主導すれば解決できた”とは考えられないか?


無理だ。


この憲法に天皇の拒否権はないし、天皇が命令を下す事も認められていない。

あくまでも奏上されて来たものを認めるだけで、せいぜいが意見を言う程度だ。

だから戦争責任も問われなかったのだが。

これはイギリス憲法を参考にしているからだが、結局のところ誰がどう決めるのか曖昧だった。


日本人はこういう体制が好きなようで、徳川将軍も最初の頃は老中の言いなりで、政策に関与できなかった。


これまで述べたような悲惨な史実はこの第55条問題を解決すれば回避出来る。

逆に放置すれば俺がどんな策をとったところで同じ結末を迎えるだろう。

何とかしなくてはいけないが、憲法改正はいくら父でも不可能に近い。

何故なら憲法発布の際に陛下自ら「これは不磨の大典で有る」と宣言しているからだ。不磨とはすり減らないという意味で、すり減ることのない立派な憲法という事だ。


これでは改正出来ない。

しかし日本人お得意の法解釈の変更と内閣法の制定で修正は可能だ。


で、いつも通り父に相談だ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る