第10話 朝鮮半島政策を変えよう①

この調子で次に改変を狙うのは下関条約により日本の勢力圏入りが確定した李氏朝鮮への対応についてだ。

日本が朝鮮半島へ深入りするのはやめさせたいし、今ならまだ間に合う。

なぜなら日本にとって重要なのは朝鮮と言う国家でも土地でもなく、その地政学的位置だけだからだ。

というのも朝鮮半島に存在する国家が日本に敵対するか、若しくは敵対する勢力によって占領されてしまうと、日本の安全と独立が危うくなるという歴史の法則があるからだ。


西暦660年代の白村江の戦い、その600年後の元寇、更に600年後の現在だ。

白村江の戦では友好国である百済ペクチェを助けるために大軍を派遣し、唐と新羅シルラ連合軍と戦ったが敗れた。

唐新羅連合軍による侵攻を恐れた日本は北九州に水城を築き、瀬戸内海に多数の砦を作り、都を飛鳥の地から防衛に適した大津へ移した。

大津なら瀬戸内経由からの防衛線は複数設置できるし最悪は琵琶湖を使って移動できるためだ。

ここまで対策してもこの時は侵攻されなかったが、元寇では直接被害を受け、大きな精神的教訓となった。


例えで表現すると日本列島を横たわった人間として見れば、朝鮮半島は大陸から日本に突きつけられた凶器のようなものだ。

だから史実の日本も安全を確保する為に、朝鮮半島を併合して自国領としたのだが、結果は朝鮮半島を守るために南満州に手を出し、次は南満州を守るために北満州に手を出し、更にソ連、次いで国民党と戦うという泥沼にはまるきっかけになってしまった。


また併合したせいで朝鮮民族のプライドを傷つけて恨みを買い、戦後も長く外交上の問題を抱え続けるというおまけまでついた。

だから朝鮮半島については日本の領土とするのではなく、安全な緩衝地帯であり続けるよう、手綱を握りつつ放置するのが上策だ。


清の影響を排除した今なら独立させる事も可能だが、それをやると間違いなくこれ幸いとばかりに清側へ行ってしまい日本に敵対するだろうし、清が今よりも弱まれば今度はロシアにすり寄ってしまう。

これは史実でも実際に起こった事だ。


日露戦争の結果、日本しか周囲に覇権国が居なくなって初めて、渋々ながら日本の支配を受け入れたのだが、結果はどうだったか?


あの地は日本にとって直接得るものは資源を含めて無いに等しい。

これは国名にも現れていて、朝鮮とは中華帝国が命名した名前だが、その意味は朝貢物みつぎものが少ないという意味の悪口なのだ。

因みに他の国に対しても同様で、蒙古もうことは古くて愚か、匈奴きょうどとはうるさい奴ら、倭わとは身長が低いという意味の差別語だ。

だからそれに気付いた日本は倭から和へそして大和へと変えたのだ。

ここまで来たらお分かりだろうが南蛮とは中華の南に住む野蛮人で、東夷とは東に住む未開人。つまり我々のことだ。

全く中華帝国の傲慢さには呆れる。


それはともかく、得るものが無いから日本は朝鮮半島のインフラ整備をゼロから行う為に日本本土に対する以上の莫大な資金を投資したわけだが、その結果相手から感謝されたか?何か日本にとって良い影響があったか?

どちらも無い。

日本の近代化が遅れただけだ。

もう少し言えば欧米列強は自国の植民地に対して積極的な投資なんてしていない。

植民地とは搾り取るからこそ植民地なのだ。


投資してどうする!


全く日本人のお人好しというのは昔から病気レベルだ。

もっと言えば日本人の悪い癖は“せっかく獲得した土地を手放すのは獲得する為に血を流した英霊に対して申し訳が立たない”などと感傷的な発想をし始める事だ。


繰り返すが、だから下手に併合してはならない。


そもそも日清戦争の戦争目的は朝鮮半島に対する清の影響力を排除することにあったわけで、その目的は達成したのだから良しとしなければいけない。

最初から方針を決めておけばズルズルとなし崩し的拡大にはならないし国民に突き上げられるような隙にも繋がらないだろう。

当面は清やロシアに擦り寄って行かないよう監視しつつ放置するのが上策なのだ。


そしてその後は史実には無かった俺の理想策である「アレ」で対応しよう。


いつものように父に献策だ。

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