47 魔族の戦い
「受けなさい、邪悪なる者ども。魔族に対しては絶大な効果を持つ、この聖魔法――【浄化】を!」
こうっ!
マリエルの錫杖から青い光が放たれる。
「【シールド】」
レキが魔力の盾を生み出した。
青い光がその盾に触れ、
ぼろっ……。
盾は一瞬にして崩れ落ちた。
「くっ……!?」
そのまま青い光はレキに迫る――。
「危ない!」
俺は慌てて彼女を押し倒した。
青い光が俺たちのすぐ上を通過していく。
「かすっただけでも致命傷を与えられるレベルの【浄化】だったのですが……惜しかったですね」
マリエルが悠然と微笑む。
「ですが、いつまでも避け続けられるものではありませんよ」
こうっ!
ふたたび青い光を放つマリエル。
そうだ、こいつは『魔族を浄化』する光のはず。
俺の精神は人間なんだから、あるいはこの魔法が通じない可能性もある。
少し試してみるか――。
俺はレキから離れ、青い光の前に立つ。
『光』といっても、こいつは実際に光速で向かってくるわけじゃない。
光の速度に対しては、いくら通常のデモンブレイダーよりも身体能力が大幅にアップしている俺でも避けようがない。
けれど、こいつは――せいぜい矢と同じか、少し遅い程度だ。
見てからでも、十分に避けられる。
だが、俺はあえてギリギリまで引きつけた。
こいつを浴びても大丈夫だろうか?
もし俺に対して【浄化】がダメージを及ぼさないなら、対マリエルは俺が簡単に無力化できる。
ばちっ、ばちぃぃっ……!
が、その考えは甘かったらしい。
【浄化】が近づいてくるだけで、俺の体のあちこちに痛みが走る。
「これ……まともに浴びたら、やっぱり大ダメージだな」
俺は諦めて青い光を避けた。
「先ほどあなたの魂を見たとき、人間と同質に感じました……が、やはりあなたは魔族のようですね。【浄化】にダメージを受けていました」
マリエルが俺を見た。
「次は確実に当てます」
「そうは……させません」
と、レキが俺の隣に立った。
「ゼルさんは、私が守ります……!」
「ふん、邪悪な魔族が【聖女マリエル】の聖魔法に対抗できるとでも? 二人まとめて消し去ってあげましょう!」
マリエルは鼻を鳴らすと、錫杖から青い光を飛ばした。
また【浄化】か。
ワンパターンだけど、これを連打されるのが俺たちにとっては一番きつい。
と、
「【エクスシールド】!」
レキが魔力の盾を生み出した。
今度は上級魔法のようだ。
ばちっ、ばちばちばちぃっ!
青い光と魔力の盾が二人の中間地点でぶつかり、火花を散らす。
威力と効力は拮抗しているようだ。
がんばれ、レキ――。
俺は隙を見て、マリエルに攻撃して無力化を図るつもりだった。
が、
「隙ありぃっ!」
先に突っこんできたのはアッシュだ。
「させない!」
俺はその前に立ちはだかった。
「ぐっ……」
「諦めろ。剣の勝負なら、お前は俺に勝てない」
必死でマリエルに対抗しているレキの邪魔はさせない――。
「ありがとうございます、ゼルさん。後は私が」
レキが微笑んだ。
「マリエルを、殺します」
****
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