38 レキと一緒に討伐クエスト

 俺たち調査部隊の役割は主に二つ。


 地形や政情、庶民の暮らしなどの調査。


 そして現地の人間たちやモンスターなどの戦闘能力の確認だった。


 前者はすべての隊が派遣された場所を探っているけど、後者に関しては隊ごとにやり方が違う。


 傭兵などの仕事に就き、戦争に身を投じて人間と戦っている隊もいるし、俺たちみたいに冒険者になり討伐クエストによってモンスターの力を測っている隊もある。


 今回の調査期間はおおよそ二か月。


 俺たちは、あと何度か討伐クエストを行う予定だ。


 前回は俺とミラが組んだけど、今回は俺とレキが組んで新たな討伐クエストを行うことになった。


「……で、どんなモンスターと戦うか、だな」




 レキと二人で相談しながら依頼書を一つ一つ吟味し、最終的にはBランクモンスターの集団を討伐する任務を選んだ。


 とある魔術師が生み出したゴーレム兵団。


 が、その魔術師は自らが制作したゴーレムの暴走で殺され、残った二十体ほどのゴーレムがダンジョンに居座っているようだ。


 で、そのゴーレム集団は時折、人里にまでやって来て、暴れ回る。


 たぶん、魔術師が生前に下した命令が関係しているんだろうけど、今となってはその内容は誰にも分からない。


 ただ、ときどき暴れ回ることは事実だし、近隣の町から討伐依頼が出ているとのことだった。


「物理耐性が強い素材で作られているらしくて、剣で相手するには苦労しそうなんだ。だから、魔術師のレキの力が要になる」


 俺は彼女に説明した。


 が、レキはどこか上の空だ。


「ん? どうした、レキ?」

「実戦は……緊張します……」


 と、レキがつぶやいた。


「レキは実力あると思うし、あとはいかにリラックスするかだよな」


 俺はレキに言った。


「リラックス……」


 うつむくレキ。


「戦場は、やっぱり怖くて……」

「怖い?」

「昔、大きな戦争で最前線に出たことがあるんです……そのときは味方が大勢死んで……私よりずっと強い人たちが戦っている場所から逃げ出して……逃げ出した先でも激しい戦いがあって……」


 レキの声が震えている。


「だから戦場が怖いんです。だけど、私は両親から期待されているので……戦果を挙げて、エヴリットの家名を高めなければ……」

「家名も大事だと思うけど、一番はレキ自身だよ」


 俺は彼女に微笑んだ。


「ただ、それがレキにとって譲れない理由なら――どうしても戦わなければいけないなら、俺が一緒に戦う」

「ゼルさん……」

「俺がレキを守るよ。前衛として」


 俺は力を込めて言った。


「だからレキは後衛にいて、安心して魔法を使ってくれ」

「優しいんですね……」


 レキが目を潤ませた。


「ありがとうございます」

「仲間だろ」


 俺は彼女の肩に手を置く。


「助け合うのは当たり前だ」


 そう、仲間だ。


 たとえ俺の精神が人間でも――。


 彼女が魔族でも。


 こうして一緒に過ごし、心を交わした相手を、ただの異種族だと断じることなんて、俺にはできない。


 俺には、もうできない――。







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