31 『成長カプセル』
ミラと別れ、俺は宿の自室に戻った。
懐から小さなカプセルを取り出す。
これは【サイクロミノタウロス】を倒した際にドロップしたアイテムだ。
一人になってからその効果を試そうと思ったから、まだ未使用状態だった。
【パワーカプセル】。
こいつはその名の通り、飲んだ人間の『ちから』がアップする。
アップは数値じゃなく倍率であり、現在の能力値の10パーセントがプラスされる。
これまたゲームと全く同じデザインだ。
「飲めばいいんだよな……?」
少なくともゲームでは『カプセルを飲んだ』という表記だったはず。
いくらゲームアイテムと同じ形をしていても見知らぬカプセルではあるわけで……消費期限とか大丈夫なんだろうか?
心配になってくる。
とはいえ、ステータスアップは俺にとって死活問題だ。
もっともっと強くならなければ――いずれ来るであろう破滅ルートに入ったときに確実に殺される。
これくらいのリスクは乗り越えないと、な。
「ええい、最悪腹を壊す程度だろ。飲むぞ!」
そして、飲んだ結果は――。
――――――――
名前:ゼル・スターク
種族:デモンブレイダー
ちから:511→562
はやさ:773
HP:1709
MP:0
スキル:【上段斬り】【中段突き】【下段払い】
【投擲】【集中】【回避】【突進】
【高速斬撃・六連】
連係スキル:【バーストアロー】【スカーレットブレイク】
――――――――
「『ちから』が上がってる! ええと……ちょうど10パーセントか。ゲーム通りだ」
どうやら成長カプセルはモブである俺にも普通に作用するらしい。
「となれば――カプセルを集めれば、一気にパワーアップできるってことだよな」
ちなみに中級や上級、超上級のカプセルもあって、それらは30パーセントとか50パーセントとか、もっと大幅に数値が上がる。
「人間界に来るたびにカプセルを集めて、もっと強くなるんだ……主人公よりも」
確か主人公のステータス値は軒並み4ケタ。
カプセルを取りまくれば、十分に超えられる数値だ。
「俺が主人公より強くなれば――俺の部隊が序盤で全滅するシナリオも変えられるかもしれない」
いや、変えるんだ。
俺が生き残るために。
そして仲間たちが生き残るために。
数日後、その日はオフだった。
四人とも完全休養日である。
それまでに全員でローテーションを組んで、複数のモンスター討伐を終えていた。
討伐クエストに関しては、人間界のモンスターの調査と人間の冒険者のレベルの把握という二つの意味合いがある。
Aランクモンスターを討伐できるのはAランク以上の冒険者だけだし、SランクモンスターならSランク冒険者だけだ。
……と考えると、モンスター討伐クエストを通じて、人間の冒険者のおおよその戦闘レベルは把握できるだろう。
実際に人間との戦争になったとき、俺がどういう立ち位置になり、本当に人間を相手に戦うのかというと、それは正直考えたくはないけど……。
少なくとも任務として『人間界の調査』を行うに当たっては、モンスターとの戦闘報告を上げることが大事だろう。
ともあれ、任務は順調にこなしているけど、オフはオフでやることがある。
俺は基本的にオフの日は『成長アイテム』があるダンジョンに挑むつもりだった。
ここ【バロンレイド】王国の郊外に広がる【西の大草原】には『成長アイテム』を入手できるダンジョンが三つ存在している。
その中でまずは一番難易度の低いダンジョンから攻略する予定だった。
と、
「よ、よう。今日はどうするんだ、ゼル?」
宿のロビーで出発の準備をしていると、ミラが声をかけてきた。
「よ、よかったら……えっと、よかったらでいいんだけど、その、俺と一緒に――」
「俺はちょっと出かける場所があるから、そこに行くよ」
俺はそう説明した。
「前から行こうと思っていた場所なんだ」
「そ、そうなんだ? よかったら、俺と――」
「俺一人で行くつもりだけど、たぶん夕方までには帰るよ」
あれ? 今、ミラが何か言いかけたか?
さえぎってしまったかもしれない……ごめん、ミラ。
「ふ、ふーん……」
ミラはなぜか残念そうな顔をしている。
「じゃあ、俺はレキと一緒に出掛けるかな……」
「ああ、楽しんできてくれ」
「ゼル、あの……」
「ん?」
「あたし……」
お? 素のしゃべり方になってるぞ……?
「な、なんでもないっ」
頬を赤く染めたミラは、そのまま去っていった。
……最後、何を言おうとしていたんだろう?
****
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