30 俺たちは先へと進む

 左右連続での超高速十二連撃――。


 それはまさに、二刀流のミラだからこそ体現できる『奥義』ともいえるスキルだった。


 ざんざんざんざんざんざんざんざんざんざんざんざんっ!


 俺の攻撃で体勢を崩していた【サイクロミノタウロス】はミラの十二連撃を防ぐことも避けることもできず、まともに食らった。


 弱点である胸の単眼に。


 ばしゅんっ……!


 単眼がズタズタに裂け、チリとなって消滅する。


 同時に【サイクロミノタウロス】の巨体が力なく倒れた。


 起き上がってこない。


「倒した……のか……?」


 俺たちは呆然と顔を見合わせ、それから、


 ぱん――!


 とハイタッチをして勝利を祝ったのだった。




「いやー、やっぱりエースは俺だよな」


 ミラは上機嫌だった。


「最後に【サイクロミノタウロス】を倒した俺の攻撃、見てたか」

「ああ、見た見た」

「すごかっただろ」

「うん、すごかった……って、この話もう三十回くらいループしてないか?」

「まだ三十回だろ。折り返し地点じゃねーか」

「あと三十回この話するんだ……」


 俺は苦笑した。


「けど、一回見ただけでよく俺の攻撃スキルを再現できたよな」

「一回じゃねーよ」


 ミラがニヤリと笑う。


「隊員同士の模擬戦訓練で、ときどきあの技を使ってただろ。いつも見てたんだよ」

「えっ」

「俺もお前みたいな技が使えたら、って結構見てるんだぜ。お前以外にも何人か、注目してる奴がいる」

「そうだったんだ……」

「まあ、いちおう見習ってやったわけだ。ありがたく思え」


 なぜかドヤ顔のミラ。


 見習って――か。


 そんなふうに言われると、なんだかくすぐったい気分になる。


「お、そろそろバロールとレキが戻ってくる時間だな。俺たちも宿に戻ろう」

「そうだな」


 席を立つ俺たち。


「会計は俺がするよ」

「……あの、さ」


 会計に向かった俺に、ミラが背中越しに声をかけてきた。


「ん?」

「ありがと、な。お前のおかげで立ち直れたよ。一緒に戦って、瀕死の俺を助けてくれて、再戦のときは元気づけてくれて……本当に嬉しかった」

「ミラ……?」

「俺は――」


 ミラの声音がふいに、優しく柔らかなものに変わる。


「あたしは、これからも頑張っていくよ」


 素のしゃべり方が出ているのは、たぶん無意識なんだろう。


 彼女の――本音を語ってくれているんだろう。


「あなたが一緒にいてくれるから。仲間が側で支えてくれると思うと、勇気が湧いてくるの。だから、これからも戦える」

「そうだな。一緒に頑張ろう」


 大切な仲間、か。


 ミラの方からそんなふうに言われ、心の中が熱く高揚していた。


 胸の中が温かくて、心地よくて。


 幸せな気持ちだった――。





****

※次回から第4章になります。


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