第6話 お家デートで、木乃香姉さんとの距離を詰めようと頑張る。

「まいったな……どうしよう」

 木乃香姉さんとデートの約束をして、何日か経過し、約束の日の前日の日になってしまったが、未だに何処に行こうか決めかねていた。


 映画でも見に行こうかなと思ったが、正直木乃香姉さんが好きそうな映画もないし、遊園地とかに行こうかと思ったが、来週には中間テストが控えているので、遠出すると、木乃香姉さんに怒られそうな気がした。

 というか、中間テストが近いのすっかり忘れていたな……今から勉強しないとまずい。

 バイトはテスト終わるまで休ませてもらっているが、木乃香姉さんが知れたら、間違いなく私とデートなんかしてないで、勉強しろと言われてしまう。


「もう、来週テストだったの。じゃあ、私とデートなんてしている場合じゃないじゃない」

「すみません……」

 夜中になり、木乃香姉さんに正直に話したら、案の定怒られてしまった。


「じゃあ、デートはテストが終わったらね。ちゃんと勉強している?」

「一応。でも、ちょっと気晴らしに何処かに出かけたりしない?」

「買い物位なら良いけど、遊びに行くのはだーめ。バイトも休ませてもらってるんなら、遊んじゃ駄目じゃない」

「ですよね……」


 やっぱり、明日のデートは中止か……買い物くらいなら、一緒に行けそうだけど、そんなのはデートでもなんでもないからな。

 そうだ。

「木乃香姉さんに勉強教えてもらいたいなー」

「え? 私に? うーん、私もそんなに勉強得意じゃないし、高校時代の勉強とか、殆ど覚えてないわよ」

 何て謙遜しているが、木乃香姉さんは結構良い大学は出ているので、俺よりは間違いなく勉強は出来るはずだ。


「駄目かな?」

「わからない所があったら、教えてあげるから。あー、でも理数系はちょっと苦手かも」

「それは俺もだし」

「くす、やっぱり血は争えないよね」

「はは、そうなのかも」


『血は争えない』か……。

 俺と木乃香姉さんは血が繋がってないのだけど、やっぱり木乃香姉さんは知らないのか……。

(だったら、告白しても無駄なのか……)


 今の言葉を聞いて、一気にガックリと来てしまい、やっぱり告白しても駄目なんじゃないかと思い知らされる。

 いや、血が繋がってない事を教えれば……でも、そんな事をして、気まずくなったら、家に居辛くなっちゃうだろうし……ああ、どうすれば良いんだ。


「ほら、さっさと机に向かう。赤点なんか取ったら、私もお父さんやお母さんに顔向けできないでしょう」

「わ、わかったよ」

 ガックリしている俺の背中を押して、勉強をするように促すと、俺も机に向かって、試験勉強をする。

 でも、まだ諦めたくはない。

 いつかは血が繋がっていない事を知る時が来るのだろうし、出来る限り、早く打ち明けて、木乃香姉さんと


「ふふ、ちゃんとやってるわね」

 寝る間際に、ハル君の部屋を覗くと、試験勉強に集中しており、一先ず安堵する。

 それよりもさっきの発言……。


『血は争えないわね』

 何であんな事を言っちゃったかな……しかも、ハル君、全然動じてる様子なかったし、やっぱり本当は血が繋がってない事知らないよね。

 でも、いつかは知ることがあるかもしれないし、その時は……いや、来なかったらどうしよう?


「うう……もし、そうなったら……」

 ハル君への想いは永遠に墓まで持って行かないと行けなくなる。

 彼に彼女が出来て、私に紹介しても、ちゃんと祝福出来るようにしないとと思いつつも、そんな日が来ることがないよう願う自分がいた。


 私とハル君は血が繋がってない――そう彼が知ったら、どう思うか……今すぐ教えたい気持ちもあるが、もし知ったら、今の関係が壊れる気がしてならず、それが怖くて今は関係を維持して、ハル君の傍に居る以外ないと思った。


 翌日――

「ただいまー」

「お帰り」

 午前中の内に買い物を済ませて、夕飯の食材なんかを台所に持って行って、冷蔵庫にしまう。

 しかし、今の買い物は食材を買いに行っただけではなかった。


「ねえ、木乃香姉さん。これから、デートしようよ」

「デート? でも、ハル君、試験が近いんでしょう。だから、駄目よ」

「出かけるんじゃない。お家デートだよ」

「お家デート?」


 何のことだと木乃香姉さんが首を傾げていたが、俺はさっき買ってきた映画のBDを取り出し、

「これを二人で観たいなーって思って。ほら、お菓子とジュースも買ってきたし、家で二人で映画鑑賞した後、ディナーとかどう?」

「くす、何それ? まあ、その位なら、良いかな。息抜きも必要だしね」


 単に家でBDを観るだけなのに、デートなんておかしいと思ったが、まあこんな日も悪くはないだろう。

 家で木乃香姉さんとイチャついて、甘い雰囲気になったら、思い切って告白を……出来ると良いなあ。


「うーん、今のシーン凄いね」

「ああ」

 買ってきた映画は、恋愛ものの邦画で、見てみると演技も上手でまあまあ面白かった。


 義理の姉と弟の恋愛映画とかないかなと思ったが、あまりにも狙い過ぎな気がして、ちょっと手が出せなかった。

「ねえ。あーんして、食べさせて」

「え? くす、何それ? はい、あーん♡」

 観ている最中、木乃香姉さんに体を密着させて、スティック菓子をあーんして食べさせてくれと言うと、木乃香姉さんも快くOKしてくれ、あーんして食べさせてくれた。


「美味しい?」

「うん」

「んもう、甘えん坊さんね。いつまで、姉離れしない気?」

「木乃香姉さん、綺麗で優しいから、死ぬまで出来ないかもね」

「こ、こら! 冗談は止めなさいって」


 冗談でもなんでもなく本気なんだが、この木乃香姉さんの満更でもない反応を見ると、どうしても期待してしまう。

「でも、今のカップルみたいじゃん」

「私なんかより、もっと若い子が良いでしょう。バイト先や同じクラスに好きな子とかいないの?」

「いない」

「そ、そう」

 事実なのできっぱり答えてやる。


「木乃香姉さんも彼氏とか居ないんでしょう」

「そういう事はまだ考えられないの」

「ふーん。じゃあ、もし作るなら、どんな男が良い?」

「だから、考えてない」

「年上と年下じゃ? 俺は年上のお姉さんとか超憧れる」


 と畳みかけて訊ねると、木乃香姉さんは頬を赤らめながら、チラっと俺に視線を送り、

「年下でもいいかも……」

「ほ、本当?」

 今のを聞いて小躍りしそうな気分になったが、木乃香姉さんはペットボトルのジュースを飲み干し、


「もう! ほら映画もうすぐ終わるよ。折角買ってきたんだから、しっかり見る!」

「お、おう」

 映画ももうすぐ終わりそうだったので、クライマックスシーンを二人で観る。

 年下でもいいという言葉を聞き、木乃香姉さんと付き合えるチャンスもワンチャンあるんじゃないかと希望を持ったのであった。

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