第45話

窓から入ってきた風が俺と栗山の間にあるカーテンを揺らし、ほんの一瞬視界を白く塞ぐ。


再び現れた栗山は真っ直ぐと俺を見つめていて、遠くの方からは園内に流れている賑やかな音楽が聞こえてきた。



と…





「他の誰でもないただ一人の人の事を想うだけで幸せな気持ちになるのが、『恋』なんじゃないだろうか。


その二つの気持ちが合わさったものを単に『恋愛』と呼ぶだけだと、俺は思う。」




穏やかな口調。


優しげな眼差し。



小さく微笑みながらそう言った栗山には、大人びた雰囲気と少年のような純真さがあって。


かあっと、俺は自分の頬が赤く染まるのを感じた。





「クっクリリン、意外とロマンチストさんなんだね。」



「そうか?」




まさか栗山の口からんなセリフを聞くとは思わなくて、何だかどきまぎしてしまう。


思わず軽口を言って誤魔化す俺。



恋愛について語り合った事なんてねぇから、こっ恥ずかしいっつーかむず痒いっつーか。


普段はストイックな栗山のハニカミ笑顔、そのギャップに萌えっつーか。





(…そういやバ会長が言ってたっけ、栗山はそれなりに経験あるって。)




けっ経験値か。


赤面な俺に少し頬を染めるだけの栗山、やはり経験値の差なのか。



つーかあれ、何でこんな話になったんだっけ。

いや俺か、俺のせいか。





「無論それが恋愛の全てではないだろうが、そう無理に全てを知る必要も答えを出す必要もない。


焦らずに黒崎は黒崎のペースで進んでいけば、それでいいと俺は思うぞ。」



「!」




そこまで言われたところで、俺はようやく気が付いた。


栗山がいつになく饒舌で、普段はあまり言わないであろう言葉をオンパレードしてる理由が。



だってさ、『答え』ってさ…





「もしかして誰かから何か聞いた?」



「…少し前から色々と相談を受けるようになってな、お前について…桐原先輩から。」




まじか。


俺についての相談ってあれか。

もしかしなくても恋愛相談だったりすんのかまじか。

何やってんだよプリンス。



そういや夏休みのデートん時に、俺が女だって事他に誰が知ってんのか聞かれたな。



まぁ二人は中学ん時からの先輩後輩なわけだし。


生徒会室でよく見るやり取りも漫才みたいで、猫被りなプリンスが栗山に気ぃ許してんのも知ってたけど。


まさか俺の事が話題になってるとは思わないんだ、仲良しだね二人とも。



けど相談って言ってる割にプリンスが一方的喋ってる絵しか浮かばないのはなぜでしょう。


あながち間違ってないっつー確信があるのはなぜでしょう。

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