第2話 廊下
ガチャ…
エリシアの細腕に寄って固く微かに錆びた音と共に扉が開かれる。
彼女に続いて扉を潜ると、そこには大きな一本の廊下が広がっていた。
この廊下を中心に、様々な部屋へ繋がっている設計。
今出てきた牢部屋もその一つに過ぎなかった様だ。
警戒と探索の為に辺りを見渡すと廊下の奥に他とは違う両開きの扉が見える。
ここから向かうには少し遠いので、一度隣の部屋へと向かい、扉に耳を当てた。
「…………」
「えーと、何してるの?」
「静かに…中に誰か居ないか聞いてる……よし、大丈夫そうだ」
そう言って、ドアノブに手をかけ押し込んだ瞬間
「そこさ」
ガチャ…ガッ!
何かにぶつかり、扉が開かない。
微かに見える隙間から中を覗くと、部屋そのものが潰れているかのように瓦礫が扉を止めていた。
「…開かないよって、言おうとしたんだけど…」
「……もっと先に言ってくれ…」
無駄に音を聞いていた事を思い出し、顔が赤くなる感覚を覚える。
「言おうとしたのに!」
「いやだから……まぁ…ごめん」
軽く謝罪しながら、扉を閉め、次の部屋へ向かった。
しかし、そこはひとめ見ただけで開かないと分かる。
「……セメント…」
何者かが扉の四隅に塗りたくったのか、ガチガチになって開きそうにない。
「…ここは、聞かなくてもわかるな」
「開かないよ?」
「知ってる…というか……何部屋あるんだ?」
「わかんないけど、二階も含めたら結構あるんじゃない?」
「かー、めんどくさい…まぁ一個一個調べて…開いてる部屋を……開いてる…部屋…」
その時、ふと思い出す。
「エリシア…」
「んー?」
「さっき、何個か入れそうな部屋があるって言ってたよな?」
「うん」
「俺に会うまでに、全部見たのか?」
「うん」
「いや!それこそ最初に言えよ!!」
「言ってたじゃん、最初に!」
「だから言ってな……いや確かにそれらしい事は言っていたが! 俺が二つ目に向かったくらいで何となく分からないか!?」
「分かったけど、考えがあるのかと思って」
「…っ…くっ、無いです、教えて下さい…!」
「もー、しょうがないなー、えーと、牢部屋…は今出てきた部屋だから…「倉庫」「研究室」「手術室」「実験室」だったかな?」
「4つか、というか入っただけで部屋の名前が分かるんだな?」
「うん、書いてる」
「……書いてる?」
チラリと今いる部屋の扉を見ると、貼り付けられた木の板に乱雑な字で「廃棄室」と書かれている事に気づいた。
(……見えなかった…というか字汚っ…)
「…こほん、確かに書いてるな…これって全部の部屋にあるのか?」
「……幾つか書いてない所もあったよ、だけど入れる部屋は全部書いてた」
「なんとも幸運だな……外に出られそうな部屋はあったか?」
「うぅん、見た感じ全部小さい部屋で…それらしいのは無かった、中は見てないから…何かあるかも知れないけど…」
「そうか…結局虱潰ししかないか…」
「私も手伝うよ! 何でも言って!」
「それは心強いな、だが危なくなったらすぐに逃げるんだぞ」
「………う、うん…」
「…よし、じゃあ…エリシアの起きた倉庫って所に行くか」
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