第8話 「なんで、そうなるの?」

お約束とは、このことを言うんだと思う。


なぜ、私がSクラスなんだ?


この学園では、入学〜15歳までの三年間クラスは、能力でS→A〜Dに分けられる。なんで魔法や騎士なんかに分けないかと言うと、15歳までは、それぞれ交流が必要ということらしい。


私の横にはユリアンが嬉しそうに座っているんだけど、その周りの生徒たちは、当然いい顔をしていない。


「私、セイラ様と一緒のクラスになれて嬉しいです」


そう言ってくれるのは嬉しいんたけど、


何故、あなたがSクラスなの?そんな視線が刺さってくる。


何故、私がSクラスなのか、理由は簡単、学力テストで一番になったから、Sの要件の一つとして、三つの能力テストのどれかで一位をとった者と言う項目がある。


しかし、先生も含めてみんなは学力テストだから、何か裏がある。つまり、カンニングしたに違いないと思っている。


だからなのだろう。今日の授業でやたら当てられて、回答させられたのだった。

しかし、所詮12歳で受ける授業なんで、読み書き計算とごく簡単なものだ。


掛け算に至っては、九九を覚えていれば十分、一桁の掛け算、割り算も一桁ときている。なので、すべて即答して見せた。


そのことがかえって敵を増やしたのかもしれない。文系でも上位貴族出身で宰相や大臣クラスの息子たちからも変な視線が飛んできている。


そして、ついに来ました。令嬢によるイビリが。


どう見ても何かを言いたそうにした二人の貴族令嬢が私達の方に歩いて来ている。ゆりあんちゃん私が守ってあげるからね。

そう思っているとウィザード公爵令嬢、エリザベート、サタンフォード侯爵令嬢、イザベルが、何故か私の前に立っている。


「ちょっと、いいかしら」


するとユリアンが立ちあがろうとすると


「貴方じゃないわよ」


二人の視線は私に集中した。こうして、二人に連れられとある場所へ行くと、お嬢様方がいらした。


「あなた!!カイン王太子殿下とはどのようなご関係ですの?」


??? 質問の意味が分からない。


「王太子殿下とは何も関係ないですが」


「嘘おっしゃい!!では、なぜ、あの時、カイン殿下がお声がけをしたのよ」


「えっ?」


「おとぼけになっても無駄よ」


確かに魔力テストの後、王太子様が来たけど、あれって


「あれって、ユリアンちゃんに声がけしたんじゃないの?」


「また、おとぼけになる気ですか?あれは貴方に向けられた言葉よ!!」


「えっ?あれ?だって私、加護ないし。魔法も光属性しかないんですよ。ユリアンちゃんは、平民出身で、希少な聖属性の持ち主だから」


「お黙りなさい!!」


エリザベート様の扇子がパチンと音たてた。周りのご令嬢方が少し離れている。どう見てもキレてますよね。私何か気に触ること言ったのから?しかし、ここは"ナーロッパワールド"、お約束があるに違いない。


「キレてないですよね」


ブチ!!


えっ?なんで、エリザベート様が手にしている扇子を片手で折ってしまった。あれ?


「あの〜エリザベート様」


目を見開いて私を睨んでいるのが怖いんだけど、ここはナーロッパ、正さないと


「そこは、"キレてなーい"ですよ」


バキ!!


「ほえー」


扇子の片方が地面に落ちていく、あれ?皆様がかなり後ろに逃げている。


「貴方、わたくしを馬鹿にしてますの?」


「バカになんてしてません。ここはナーロッパな世界だから」


みるみる鬼のような形相になっているし、左手からはファイヤーボールができているんだけど。すごい無詠唱でできるなんて、


「ここは、ナーロッパではありません!!本当にバカにしているの」


「エリザベート様!!おやめ下さい!!」


イザベル様が止めに入っているんだけど、と思っていると王太子様が駆け寄ってきた。


「ウィザード公爵令嬢、何をしている」


「えっ?ああ!!」


王太子様の登場に驚いたエリザベート様は間違って私に向けてファイヤーボールを発射してしまった。


王太子様は間に合わない。みんなの悲鳴がきこえてくる。


「きゃぁあああ!!」


「危ない!!」


ふっ!!


私は、火を息で吹き消した。あの地獄の特訓からすれば、たいしたことないんだけと、みんな呆然としている。王太子様も目の前の状況に驚いていた。


一番驚いているのは目の前のエリザベート様に違いない。でも、王太子殿下に虐めの現場を目撃されてしまっている以上、彼女たちは、この後大変なことになるかもしれない。


これはチャンスだ。ここで恩を売っておけば、ムフフ。


「王太子殿下、エリザベート様は光属性の魔法しかない私に火属性の特性を教えてくださっていたんです。そうですよね。エリザベート様」


「え?」


何呆然としているのよ。早くうんと言ってよ。私が合図を送っているけど、反応がない。おっと王太子殿下に気付かれた。


「何をしているアシュラ令嬢」


「いえ、なんでもです」


あーイライラする。早く気付いてよ。と思っているとイザベル様が


「ええ、そうですわ。ね!!エリザベート」


横で肘打ちをしている。


「ええ、そ、そうですわ」


グッジョブ!!親指を突き出すポーズを取りたいけど、そこはぐっと我慢。


「殿下、そういうことですから」


「そ、そうか?何もないんだな!!アシュラ令嬢」


「はい。何もございません。エリザベート様ははわたくしのことを思ってなさったことです」


「そ、そうか、今後、こんな紛らわしいことをしないように」


「はい」


こうして、問題を未然?に防ぐことができ、王太子殿下は、教室に戻っていかれた。


「あ〜生きた心地がしなかった」


とここまで言ったんだけど、彼女らは


「今回のことは感謝します。しかし、本当にカイン様と何もないんですの?」


「あ〜ですから、何もないです」


「嘘はありません」


「まっ、嘘だったら承知しませんから、行きましょう。イザベル」


こうして私は、この難局を乗り切ったのだった。

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