第2話 「地獄の特訓の日々とおませな男の子」

加護がない私、4歳から地獄のような特訓が始まった。


父、アーロン・アシュラは闘神ダイモスの加護を持ち、このコーデリア王国で五虎将軍の一人――第三軍を統率する大将軍。

一代で準男爵にまで上り詰めた男だ。今の王様とは学生時代からの友人らしい。


しかし、法衣貴族なので、うちは貧しい。

だからこそ、と父は加護を持たない私に剣術を教えた。


そして、同じ準男爵家出身の母、ハイジ・アシュラ。

彼女はヴァルキリーの加護を持ち、剣術、礼儀作法、学問、そして貴族の義務である「ノブレス・オブリージュ」の重要性を叩き込んできた。

しかも、超スパルタ。


「髪が長いと危ない」と言われ、それまで伸ばしていた髪をバッサリとショートカットにされたのもこの頃だ。


特に剣術は壮絶だった。

4歳の私に、毎日千本の素振りをさせたのだ。4歳だよ? どんなスパルタやねん!!


さらに筋トレ、ランニング、謎のお猪口を持って腹筋するというトレーニングまで。

その上で勉学もこなす毎日――転生していなかったら、精神的におかしくなっていたと思う。


5歳(やっと“ピーッ”コちゃんと同じ歳)になった。

再び聖マリアンヌ教会で、加護と魔力の検査を受けることになった。

これは、3歳のときに加護がなかった者への再検査の機会らしい。実は7歳のときにももう一度受けられる。


【今回の結果】


加護:なし

魔力:3

属性:光


この結果を見て、父は悲しそうな顔をした。

実は父自身が5歳で加護を受けたからだ。少しは期待していたのだろう。


母は「まだ7歳があるわよ」と言っていたけど、7歳で加護を授かった人は歴史上ただ一人、英雄ダイアポロのみ。

……つまり、全く期待できない。


結果を見ると、魔力が少し上がっていた。属性は「光」のみ。

雷や火の魔法が使えると言っても、魔力3は生活魔法レベルだそうだ。

だけど――これって、生活魔法なのだろうか?


実は、サンダーアローとファイヤーアローもできるようになっていた。

さすが、ファンタジーの世界だ。


複数属性は一人ひとつのはず。

「ひょっとしてチートかも?」と母に尋ねてみた。


「ねえねえ、お母さん。魔法の属性って、一人一つだけなんですか?」


「二つ以上の属性を持ってるのは、この国ではごくわずか。魔導騎士団に数人しかいないわよ」


……やはりおかしい。

けど、よく考えると雷も火も光の一種だよね。

ということは、磁力も使えるようになれば他の属性も使えるかも――と、勝手に妄想してワクワクしながら魔法の練習を続けた。


この頃になると、お兄様やお姉様も特訓の手伝いをしてくれるようになった。

二人ともヴァルキリーの加護を持っていて、学園でもかなり優秀らしい。

……けど、お母様に似たのだろう。全く手加減をしてくれない。


生傷が絶えない日々。

そんなある日、「ヒールでも使えたらな」と思った瞬間――使えた。嘘でしょ!?

ついでに「身体強化」も試してみたら、できてしまった。


けど、魔力の消耗が激しかったので、身体強化は練習のときには封印。

魔力練習のときだけ使うことにした。


そして、あの日――。


私のもとに、カインという同じ歳の男の子がやってきた。

父の友人の子らしい。

黒髪にブラウンの瞳、将来絶対イケメンになるタイプ。

もしこれで王太子殿下だったら、完全に主人公、もしくは攻略対象の一人よね。


……でも、準男爵の娘である私は、完全なモブ。

悪役令嬢の下で主人公をいじめる実行犯ポジション。

ざまぁされたら死刑コース。いやいや、考えすぎ。


剣術の練習をしていると、彼はいきなり入ってきて私を打ちのめした。


「俺が相手だ」


「えっ?」


練習用の剣を持って立ち塞がるカイン君。

いきなり「勝負だ!」とか言って襲いかかってきた。意味がわからない!

しかも彼は軍神の加護を持っていると聞く。必死に受けるしかできなかった。


「なんだ! 受けるだけで精一杯か? それでもあのアシュラ将軍の息子なのか!」


……何言ってるのよ。こんな攻撃、受けるしかないでしょ!

でも、隙が生まれたので受け流してみた。


「おおっ!」


反撃しようとしたけど、もう構え直してる。

「うそっ」

「へー、やるじゃないか。受け流しもできるんだ。じゃあ――本気だ!」


バキッ!


私は負けた。けど彼は優しかった。

どうやらヒールが使えるらしく――


「わりぃ、ケガさせちまったな。ヒール。」


……え、なんか、ときめいた。


その日の夜。お風呂に入っていたら――なぜか、彼も入ってきた。


「あーー!! なんで入ってくるのよ!」


慌てて体をタオルで隠す私に、カインは言った。


「いいじゃん! なんで隠すんだ?」


そのままタオルを剥ぎ取ろうとする彼。

「やめて!」と叫んでも、5歳児の腕力には勝てなかった。


「何、恥ずかしがってんだ? あっ――」


「いやーー!!」


……そして彼は気づいた。私が女の子だということに。


前世は厨二病の男。

でも今は女の子。

心の中の女の子の部分が勝って、思わず泣いてしまった。


さっきのトキメキ、返してほしい。


両親が飛び込んできて、カインは素直に謝った。


「けど、おまえ、女なのに本当に強いな」


「私をなんだと思ってたの?」


「だって、あれだけ強いんだもん。嬉しくてつい……」


鼻を指でかきながら笑う彼の顔に、またドキッとしてしまった。


「てっきり男だと思ってた。同い年で俺の剣を受け止めたの、お前が初めてだからな。どんな加護持ってんの? ダイモス?」


「わ、私……加護がないんだけど」


「え? 今なんて?」


「加護、ないんですけど」


「うそだろ。加護なしであそこまで強いのかよ!」


「でも、負けちゃったし」


「そんなことない。俺も加護をフルに使わないと勝てなかったぞ」


「そうなの……はぁ」


「なんでため息つくんだよ」


「裸見られたんだよ。もうお嫁に行けないかも」


「ご、ごめん! このことは内緒にする!」


「でも、どこからか漏れたらどうしよう……」


「もしお嫁に行けなくなったら、俺が責任とるから!」


……おい、何その台詞。反則。


こうして、カインはよく遊びに来るようになった。

「結婚するから」とか言って、私と一緒にお風呂に入るんだよ。

しかも、じろじろ見てくるし……まったく、エッチなんだから。


とはいえ前世が厨二病のヲタ男。

「反撃~!」とか言って、彼の体をつついたりもした。

でも、彼は私の身体には一切触れてこなかった。

……意外と紳士。


そんな日々も、6歳になったときに終わった。

カインが来なくなったのだ。両親は理由を教えてくれなかった。

たぶん――加護を持たない子と遊ぶな、と言われたのだろう。


それを痛感したのは、貴族のお茶会に出たときだった。

母と参加したその場で、私が加護なしだと知ると、皆が話を切り上げて離れていった。

私は隅っこで一人、お茶を飲むしかなかった。いわゆる“ボッチ”。

……まぁ、厨二病の私には慣れっこだけどね。


そのお茶会で、カインを見かけた。

けれど、彼は私に気づかなかった。

……ショックだった。


こうして私の厨二病はさらにこじれ、魔法と剣術の特訓に明け暮れる日々が始まった。


魔法は、ラノベで読んだ通り、魔力が上がっている気がする。

(魔力量が測定できないからわからないけど)

ライトを点灯できる時間が6時間以上になったから、たぶんそうなんだろう。


7歳のとき、剣神ゴエモンの加護を持つ5歳の弟に剣術で負けた。

そのとき、もっとショックだったのは「魔力量は生まれた時に決まっている」と聞かされたこと。


父が弟アーサーに言っていた。


「魔力量は生まれた時点で決まっている。これは常識だ。だから、アーサー、魔法が使えるからといって過信するな」


――その一言で、私の希望は完全に消えた。


それでも私は、寝る前に魔力が枯れるまで魔法を使う練習を続けた。


そして迎えた7歳の儀式の日。

超スパルタ教育と魔法練習の成果で、水・土・風・聖属性の魔法が使えるようになっていた。


光魔法って、よく考えたら気功みたいなものかも?

そう思って陰でドラゴン●ールみたいな技を試したら、見事に成功。


“ピー”ハメ●、“マ”ピー“コ●殺法”、“ピー”玉、“太”ピー“拳”、

そして“ピー”空術で空も飛べるようになった――けど、それは内緒。


しかし、なんだかな〜。


【7歳の検査結果】


加護:なし

魔力:5

属性:光


そんな結果に、両親は深く落胆したのだった。

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