第81話

あの髭の男の顔を思い浮かべるだけで、吐き気すらする。


──だけどあの憎い男がもう生きていないのだと思うと、なんともやりきれない妙な気分になった。


ヒヤマの物の言い方にしてもそうだ。


仲間の死を悲しむ様子なんて微塵もない──心底めんどくさい出来事のように話すヒヤマ。


まるで人の死なんて、どうでもいいことのように。






それに、あの優しい人がそんな簡単に人を殺すだなんて───。


まるで信じられない。






「本当に、リーさんが殺したの…?そんなわけ…。」





動揺しながらそう口走ると、ヒヤマはキョトンとした表情でわたしを見た。


それから掌を返したかのように、ケタケタと笑い出す。






「お前、あいつを誰だと思ってんだ。そんなのあいつには朝飯前だ。飛んでる虫を叩き潰すくらいの出来事さ。」

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