第55話

それもこれも、あの綺麗な顔をした男のせい。


彼がいなかったら、わたしはあのまま死ねただろうから。






だけど、わたしは彼を憎めない。






嫌らしい目付きでわたしを見る髭面の男。


いつも何かをわたしに喚いているおばさん。


わたしになんて何の興味もなく、ただ黙々と仕事をこなす、ニキビ面の男と長髪の男。


わたしを哀れみ嘲笑うヒヤマ。


そして、あの美しい男。






この船には多分、その6人が乗っている。







その中で彼は───あの綺麗な男だけは。


わたしの味方のように、思えてならなかった。

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