強姦

第54話

───

──




それからのわたしは、少しずつだけど、お弁当を食べたり水を飲むようになった。


別に、生きようと思ったわけじゃない。








母親に捨てられ、これから異国の地に売られるというのに、どうやったら生きたいと思えるのだろう。


何も信じれないし、もはや何も知りたくない。


生きる活力なんて、どこにも何にも見い出せない。


ただ、断食を止めたってだけ───。






あの身体中の脱力感、喉が渇いて仕方ない苦しみは、もう味わいたくない。


一度、飲むこと食べることの喜びを味わってしまうと、もう戻れない。


───要するにわたしは、死にたくても死ぬことの出来ない、ただの意気地無しなのだろう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る