断食

第46話

───

──




何かが床に落ちる音がして、目が覚めた。


はっと体を起こすと、冷たい床と転がったお弁当が目の前にあった。


ゆらゆらと揺れる感覚が、体に戻る。


そうだ、ここは船の中。


わたしは誘拐されて──そして家には帰れない。





夢───?


眠っていたんだ───。





わたしの体は汗だくで、まだ心臓がドクドクと不穏な音をたてていた。


格子の向こうに汚れた白いスニーカーが見え、見上げるとニキビ面の男がわたしを見下ろしていた。


男は中国語で何か喋ると、お弁当を指差した。


恐らく、食べろと言っているんだろう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る