第41話

見上げたヒヤマの顔は、もう笑ってはいなかった。


その代わり、同情するような哀れむような表情を浮かべ、わたしを見ていた。









「かわいそうな人だ。何もかもが幸せそうに見えたあなたの人生は、本当は偽りのものだったんですね。実の母親に金を渡してまで売りに出されるなんて──あなた程哀れな人を、見たことがありません。」








「ママ…どうして…。」


「本土に戻ったら、あなたを売春宿に売ることにしました。若いしなかなかお綺麗だし、きっといい値で売れるでしょう。」


「どうし…て…。」


「それまでは少々長旅になりますが、出来るだけしっかり食事をしてください。あんまり痩せていると、ウケが悪いですから。」


「…。」


「それから──。」








部屋の入り口から出かけて、思い出したようにヒヤマはまたわたしを振り返った。






「これも覚えていてください。今まであなたは我々の大事な姫だったが、今からはただの娼婦だ、ということをね。」

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