第38話

そこにいたのは、久々に見るヒヤマの姿。


前に見た時と同じように、グレーの細身のスーツをきっちりと着こなしている。






わたしは居ても立ってもいられずに勢い良く立ち上がると、出来るだけヒヤマに近付けるように格子戸まで走り寄り、叫んだ。







「どうなったの!?身代金は??交渉は、終わったの!?」






ヒヤマは一歩わたしの方へ近付くと、興奮状態のわたしとは対照的に、ひどく落ち着いた表情で淡々と言葉を発した。







「身代金は貰いました。」


「ほんとに!?良かったぁ!」


「それも、こちらの要求よりも、多めの額をね。」


「え…、どうしてそんな…。まあいいわ、わたしは帰れるのね!?」












「─────いいえ、帰れません。」

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