第34話

─────

───



だけどわたしの願いなんて叶うはずもなく、それから何度かお弁当や飲み物が運ばれたり下げられたりしたけど、やって来るのはあの髭面の男かニキビ面の男、それから長髪の目付きの悪い男のどれかだった。







そして定期的に何やら中国語で急かしたてる50代くらいのおばさんがやって来て、トイレに押し込められる。


トイレまではご丁寧に目隠しをされているし、用を足す時ですらおばさんが真後ろにいるから、すごくやりにくい。


──ただ、食べたり飲んだりなんてほとんどしていないから、出るものも出ないんだけど。


とにかくおばさんが頻繁に来るおかげで、ヒヤマに言われたように天井のカメラに向かって「トイレに行きたい。」なんて叫ぶようなことは、しなくて良かった。







あの美しい若い男とヒヤマは、わたしの前にはめっきりと姿を現さなくなった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る