第23話

わたしを見るヒヤマの顔は、やっぱり俳優やモデルみたいに整っている。


たださっき見た美しい男とは違って──人間らしい美しさだと思った。








「まあ、あなたはいずれ解放されるでしょうから詳しいことは言えませんが、自ずと分かるでしょう。」


ヒヤマはそう言って、カチャリと鍵を完全に掛けた。


「中国人がいる、というより日本人はわたししかいません。日本語を話せるのも、わたしだけです。」


ヒヤマはそう言ってまたうっすら笑うと、コツコツと靴音を響かせてこの部屋から出て行った。






扉の向こうから聞こえるヒヤマの靴音は、徐々に小さくなる──。


彼がいなくなると、わたしはまた四方を壁に囲まれた檻の中に、たった一人きりになった。

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